「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」の公開によって世界的なスキャンダルになった、中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の約1150万点の内部文書。この「パナマ文書」には、アイスランド、イギリス、ウクライナ、アゼルバイジャンの政治家や役人の金融情報が記されている。ロシアからは12人の政治家と経済人が利用しており、この地に20億ドル(約2200億円)を預けているとされる。
ロシアでは、公開の1週間前に警告されていた。特ダネがあると記者団に話したのは、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官。クレムリンは、さまざまなジャーナリストから質問を受けたことから、文書の存在を察知したのだ。だが実際に特ダネが届いてみると、国営テレビはほとんど報道せず、国民も広場に集まることもなかった。
とはいえ、結論を急ごうとはしていない。「(この文書には)どのようなことが書かれているのか、これが一体何なのか、どう扱えるのかを調べるのに、少なくとも数週間はかかる」と、ロシアの銀行「ズベルバンク」のゲルマン・グレフ総裁は話し、「熱々のピロシキを揚げる」ようなことを控えるべきだ(早合点しない方がいい)と述べた。
とはいえ、「パナマ文書」に名前が記されている個人(政治家、役人、また経済人)の一部はすでに、関与を否定している。「このできごとには何の関係もない。私はすべての関連文書を提出する。これで数年分を簡単に追跡できる」と、ロシア連邦経済発展省のアレクセイ・ウリュカエフ大臣は話した。
7日になって初めて、ウラジーミル・プーチン大統領がこの件に関する自身の立場を示した。大統領によれば、ICIJの調査は「内側から(ロシアの)国情を揺さぶる試み」であり、「ロシアをより従順にする」ことをはかったものである、という。「パナマ文書」は自分とは無関係であり、そこに汚職という意味合いはない。「見よ、ロシア大統領氏の某友人がいる、彼はかの地で何かしていた、多分、何か汚職に関わることだろう・・・その何か、とは何か?別に何でもないのだ」と大統領。
国営また”親政府派”のマスコミの最初の反応は薄かった。3日朝、ジャーナリストが調査していることを伝えた国営テレビは、あくまでもウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、欧州サッカー連盟(UEFA)のミシェル・プラティニ会長、「バルセロナ」のFWであるリオネル・メッシ選手の話題として扱っていた。「ロシア通信」はマイナーなニュース扱いで伝えていた。4日朝、国営新聞や国営に近い新聞は、この”パナマゲート”(ゲートとは、ウォーターゲート事件からきているもので、スキャンダルの意)について、一切書いていなかった。詳細に伝えたのは、「ノヴァヤ・ガゼタ」や「エコー・モスクワ」といった、大手の野党メディアだ。
交流サイト(SNS)では、このタックスヘイブン情報への反応がもっと強かった。ユーザーが何よりもネタにしたのは、ロシアの国営メディアがICIJの公開内容からどんな情報を選定したか、である。また、チェロに関する冗談も飛び交った。というのも、ジャーナリストがロシアの部分で中心的な人物としたのが、プーチン大統領の友人で、チェロ奏者の、セルゲイ・ロルドゥギンだったからである。「南ドイツ新聞」はロルドゥギンを「プーチンの財布」と呼んだ。短文投稿サイト「ツイッター」では、paninというユーザーがこう書いている。「息子にチェロを習わせておけばよかったよ。まさかこんなことになってるとはね」
ペスコフ大統領報道官が特ダネがあると言ったため、皆もっとすごいものを期待していたようだ。タックスヘイブンに20億ドルばかりあったからといって、別に驚きではないのだ。
デモをしようと通りに出た人はわずか3人。「プーチンはパナマに金を隠してる。弾劾」とのプラカードを掲げて、バラバラに議会の建物の前に立ち、捕まっていた。
いずれにしても、アイスランドのような数千人のデモは、ロシアでは期待できなかった。これはロシアの伝統ではないと、ロシアNOWに話すのは、世論調査センター「レバダ・センター」社会・政治調査部のナタリヤ・ゾルカヤ上級研究員。「ロシアではたくさんの汚職スキャンダルがあった。検事総長に、国防省と。人々を怒らせるであろう沢山のことがあった。ところが、ロシア人はこれで通りには出ない。大規模なデモで問責できると社会が理解しているヨーロッパの民主主義国家のような、深い関与がないから」。具体的な情報(証拠付き)はまだ出ておらず、また汚職政府というイメージはずっと前からあるため、この文書に関するニュースはセンセーションではないのだと、ゾルカヤ上級研究員は説明する。
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