年齢とともに、身体の平衡を司るシステムの働きは悪化していく。だが、この老化現象の進行を遅くするばかりか、逆転させることさえ可能だとロシアの学者達は考えている。そのためには、合気道をやり、親指をふくむ、足の前のほうへの負荷を増やせば、それで十分なのだという。
学者達によると、空間でバランスを保つには、身体を支える部分(足裏)、とりわけ親指の触覚の受容体からのシグナルが、脳にとって不可欠だ。ここには、機械的な刺激に最も鋭い感度をもつ独自のセンサーである「パチニ小体」が、最高に集中している。
学者達は、閉経後の54歳から78歳までの女性35人の参加を得て、実験を行った(エストロゲン、別名女性ホルモンの分泌低下により、身体の平衡維持の問題は、女性にとって、男性よりも深刻になる)。参加者には、目を開いたまま、あるいは目を閉じて、立ったり座ったりしてもらった。最高の結果を出したのは、8年間にわたり週2~3回ずつ合気道をやっている女性達だった。合気道では足裏の前の部分に、とくに親指に必ず負荷がかかる。
やはり8年以上フィットネス、ヨガ、ダンスなどをしている女性達はどうかというと、容易にバランスを保てたのは、目を開いた時だけだった。一方、運動を全然していない人にとっては、ただ立ち上がるのもストレスになった。
その後、学者達は、合気道をやっている若い男性達を対象に実験を行ったが(合気道の経験度の様々な人を選んだ)、ここでも似たような結果が出た。
実験を行ったのは、ショーロホフ記念モスクワ国立人文大学、ノヴォシビルスク民族研究国立大学(略称「ノヴォシビルスク国立大学」)、連邦国立生理学・基礎医学科学研究所の研究者達。そのアイデアは、文字通り「宇宙から降って来た」。
「宇宙に長期滞在した飛行士は、地上に戻るとほとんど四つんばいになる。アンドリヤン・ニコラーエフとレオニード・ポポフは、初めて軌道上に4日間滞在したが、無重力のため、ほぼ人事不省になって戻って来た」。こう語るのは、研究に参加したオリガ・バザノワさん。「認識機能、思考機能、血液循環機能が損なわれていた。それというのも、足の下に大地を感じていなかったためだ」
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