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ロシア連邦国家会議(下院)議員がまた、中絶禁止に向けて動いている。もし関連法案が採択されれば、ロシアでは、自らの希望で中絶することは極めて難しくなる。こういう動きは今に始まったことではなく、かつて1955年まで、ソ連では中絶禁止法が施行されていた。
だが現実には、中絶禁止は出生率上昇をもたらさないどころか、女性の死亡率を悪化させた。なぜなら、女性達は“地下で”、しばしば自宅で堕胎したからだ。
1993年になると「国民の健康保護に関する基本法」により、すべての女性は、自分で産むか産まないか決める権利を手にした。しかし、62%のロシア人は依然として、中絶は許容できないと考えている(2013年9月の「世論調査基金」によるアンケート)。
中絶は女性の問題
「つい100~150年前には、奴隷を殺しても罰せされない場合があった。8~10歳の児童を働かせ搾取することができたし、『女性は人間なりや』という問題が大真面目で議論されていた」と、慈善基金「家族と子供」のスヴェトラーナ・ルドネヴァ所長は歴史を振り返る。「ロシアの法律も世界各国のそれも、次第に文明化の道を歩んできたが、私には、中絶は蛮行だとしか思えない」
モスクワっ子のナターリアさんはまだ16歳だった時に、妊娠してしまったという。別荘の隣に住む17歳の少年と初体験した結果だ。しかし、結婚は無理だとすぐに分かった。産めば未婚の母になるしかない。
「私の母が兄を産んだのは18歳の時で、その翌年、私が生まれたの。それで母は高等教育を受けることができなかったのに、2~3年後、父は出て行ってしまった。そういう経緯があるので、その時私は、中絶するって、すぐに言ったわけ。その悪影響の可能性は承知していたけど、リスクを冒すほうを選んだ。今私は26歳で、愛する夫と幼い息子、それに自分の仕事も持てている。中絶したことは、まったく後悔していない」
中絶の原因
女性達を中絶に踏み切らせる原因はいろいろある。アンケートによると、中絶が許容されるのは、第一に、生活が成り立たず、金銭的に苦しい場合。医師達も、現状は、この調査結果を裏付けていると認める。
「普通、中絶にやって来るのは、生活が苦しい女性達で、彼女らは、子供を養育できないだろうと考えている。あと、そのとき結婚していなかったり、不倫だったり、相手の男性が十分信頼できない、というケースもよくある」。こう説明するのは、総合病院「Medswiss」のユーリア・ゴレロワ泌尿婦人科部長。
なるほど、言葉の上では――つまり、アンケート結果を見るかぎりでは――男性のほうが、中絶に反対する人が多く、68%もいる。女性は57%だ。ところが実際には…。
「男性のほうが女性を中絶に引っ張って来ることが非常に多い。これは女性にネガティヴな感情を呼び起こさずにはいない。男性は、きちんと避妊をしてこんな事態を防ぐことがずっと簡単なのに、その男性のほうが、中絶すべきだと言い張ることがしょっちゅうある。後遺症として不妊のリスクを負うのは彼らじゃないし。これがどんな精神的トラウマになるか分かっていない」。ゴレロワ氏は嘆いた。
性教育の欠如
もし、男性が子供の養育を拒否すると、女性には、行動の余地はもうあまりない。保育園、幼稚園に空きがなく、育児を手伝ってくれる人がいない場合、女性は働かずに家にいるしかない。その場合、国は――例えばモスクワでは――、子供が1歳半になるまで毎月、2万ルーブル(約4万8千円)を支給する。だが、ルドネワ氏の考えでは、問題はそれだけではない。
「女性は、妊娠初期から、心理的また生理的に母性に目覚めていく。でも、医者や相手の男性、家族によっては、『これはまだ赤ん坊じゃない』と女性を説得することがある。しかし私から見ると、受胎の瞬間からもう人間であって、人間を殺すことが許されないことに、何ら疑問の余地はない」。ルドネワ氏はこう言う。
しかし、こうした意見に賛成するロシア人は28%にとどまり、 51%は、中絶が「合法的殺人」であるとは考えていない(世論調査機関「レバダ・センター」、2013年9月)。
一方、回答者の大多数(64%)は、性教育が必須と考え、それが教育に欠けているとしている。
医師達もまた、未成年者の中絶のほとんどが、この方面での無教育、無知と関係していることを認めている。
「私の考えでは、中絶を禁止する必要などない。中絶の理由は、人によって千差万別なのだから。でも、私は医師としていつも、思いとどまるように説得に努めているし、それが聞き入れられることが少なくないのを誇りに思っている」。ゴレロワ医師はこう語る。「中絶の件数を減らすには、きちんとした避妊を広めなければならない。子供達は、親に望まれて生まれるべきだから」
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