ユーリイ・スミチュク撮影/タス通信
歴史家で国立高等経済学院付属第二次世界大戦歴史社会学国際センター長のオレグ・ブドニーツキイ氏は「歴史歪曲の問題はこじつけである」として、国外の歴史家に歴史をすり替える試みのない点を指摘している。
しかし、すべての人がロシアの歴史家らのそうしたアプローチに賛同しているわけではない。多くの人は、歴史的問題はロシアの隣国によってその時々の政治のために利用されている、と考えている。
モスクワ国立大学の歴史家で政治学者のドミトリー・アンドレーエフ氏は「大祖国戦争のよく知られた事実や結果を見直そうとする試みが活発化した」と述べている。
「歴史の記憶」基金の歴史家であるアレクサンドル・ジューコフ氏もそうした声明の出現を現在の政治と関連づけている。
同氏はソ連時代に移住した主にロシア語系市民の子孫たちが「非国民」という地位にされているラトビアとエストニアを例に挙げ、「バルト諸国当局が形作っている歴史観は集団的な人権侵害と化している」と述べている。
ジューコフ氏はこれらの国の市民の関心をソ連時代の犯罪へ集束させることは、追放や弾圧といったソ連時代の歴史的悲劇の意味づけである、とは考えていない。
同氏はウクライナも例に挙げ、戦争中に行われたウクライナ民族主義者による犯罪の称揚といった「歴史の書き換え」がこれまでずっと行われており、これが社会の分裂を促して今の悲惨な紛争の原因の一つになった、と述べている。
一方、ニキータ・ペトロフ氏は、戦争に関するテーマの過度の政治化はロシアの国外ではなくまさに国内で見られている、と指摘してこう語る。
「ロシアではソビエト体制の弾圧的本質が暴露されるといった場合を含めて、戦争に関するありのままの議論が始まるやいなや、みんな、なぜかあれは真実が歪められている』などと言い始める」
一方、ジューコフ氏は「私には、ソ連の歴史の悲惨なページについて組織的に口を閉ざしているようには思われない。少なくとも、ロシアがスターリンの弾圧や1930年代の飢餓の悲劇を国家的レベルで否定するようなケースにお目にかかったことは一度もない」
ソ連時代が陰鬱(いんうつ)一色で描かれている隣国の歴史談話を、ロシア政府や関係者が「歴史の歪曲」と呼ぶことを批判する歴史家もいる。
東欧に共産主義をもたらしながら、ソ連が果たした役割からすれば、これは十分に説明可能だと、ロシア政府に批判的な人は話す。
しかしながら、これに反対する人は、独自の歴史や、歴史的事実にもとづいた評価についての必然的な見解の相違とは区別せよ、と訴える。
「黒は黒と、白は白と呼ぶべきである。事実を歪曲してはいけない。個々の解釈の強弱と、歴史的真実は別物だ」とアンドレエフ氏は考える。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。