ロシアで人気の高い代替医療

ウラジーミル・アスタプコービチ撮影/ロシア通信

ウラジーミル・アスタプコービチ撮影/ロシア通信

ロシアでは多くの人が代替医療を信じ、都市部の需要も安定的だ。利用者の代替医療関係者に対する要求はそれほど高くなく、不確かな効果に望みをかけながら、決して安くはないお金を支払う用意もある。人気の高い理由をロシアNOWが調査した。

 ロシアの市場調査会社「オンライン・マーケット・インテリジェンス(OMI)」が2011年に実施した調査で、ロシア人の88%が代替医療を信じていることが明らかとなった。その人気は高まる一方だ。ロシア国立研究大学「高等経済学院」の専門家が最近行った調査で、これが証明された。専門家によると、ロシア人は年間300億ドル(約3兆円)ほどを代替医療に使っているという。一般医療の関係者はこれに驚いている。

 

奇跡を信じる人たち

 心理療法士で医学博士のレフ・ペレジョギン氏はこう話す。「信仰治療師、魔術治療師、超能力者などがまやかしであることを、賢明な人の誰もが知っている。それなりの国であれば、ホメオパシーに対する考え方は一つ。『やってみたいならやればいい。だが結果に文句を言わないように』と」。OMIの調査では、ロシア人の25.9%がホメオパシーを信じている。

 ロシアでは代替医療に保険はきかないが、人々はそれでもいいと考えている。ペレジョギン氏は、「無教育、恐怖、奇跡を信じる気持ち」が代替医療に人を向かわせると考える。

 ダリヤ・レシナさん(32)は、奇跡を求めて、鍼術(しんじゅつ)を受けた。ロシア人の30.4%が鍼術を信じている。「私は出産できない、耐えられないと、医師に言われたの。2年前に養子を迎えることをアドバイスされたりしたから、訪問したのは鍼術師のところだけじゃない。10回の施術で1000ドル(約10万円)。結果は出なかった。でも今後も母親になれる可能性が少しでもあるなら、何でもやるわ」

 モスクワ在住のタチヤナ・サモイロワさんは、医師に難しい静脈の手術が必要だと言われ、ヒル治療の専門家のもとを訪れた。ロシア人の15.7%がヒル治療を信じている。「いきなり手術を受けるのではなくて、まず他の方法を試してみようと思った。特にヒル治療。あまり気持ちの良いものではなかった。1日中流血してた。650ドル(約6万5000円)支払って、特に良くなったわけでもないけど、悪くなったわけでもない」

 霊能者、魔術師、超能力者などを頼る人もいる。エカチェリーナ・ドロノワさん(57)は、すでに17年も夫のアルコール依存症とたたかっている。本人は問題を認めていないため、入院しようとしない。そのため、医師も助けようがないのだ。「超能力者に500ドル(約5万円)を支払って、夫の写真を見せた。水に語りかけ、祈りの言葉を声に出して言い、それを夫のスープか紅茶にコップ半分ずつ入れるよう、アドバイスを受けた。2週間その指示に従ったけど、効果はなかった。でも超能力者に話をしただけで、気持ちが楽になった」

 

代替医療を受けた人は満足

 ロシア国立研究大学「高等経済学院」(HSE)の報告によると、村よりも都市部で、代替医療や疑似医療が普及しており、また種類も多い。

 代替医療の専門家を見つけるのは難しくない。信仰治療師や魔術治療師のウェブサイトがインターネット上に多数ある。そのような人々の多くはライセンスなしで活動している。理論的には刑法典の違法医療活動に該当するが、罰則を科せるのは、その活動が健康に害をおよぼした場合のみ。

 信仰治療師オレグ.K氏のアシスタントはこう説明した。「師匠は個別に自分の力を見せる。完全なマンツーマン。価格はウェブサイトに示してある通りで、初回は30分2000ルーブル(約5000円)」。オレグ.K氏はあらゆることをやっている。恋心の消滅から気管支・肺疾患の治療までを行い、お守りをつくる。大学の医学部で学んだことはなく、結果を保証しない。

 効果のほどは定かではないが、「世論」基金が今年3月に行った調査によると、代替医療を受けた人のほぼ80%が、そのサービスに満足している。

「単なるプラセボ効果や気休めの場合もある。神経過敏な人には効果がある。我々の病院に来る人の多くはいかなる病気にもかかっていない。インターネットや新聞をたくさん読んで病気の症状を覚えると、その人の身体が病気を模倣する。だがこれは頭から引き起こされるもの。このような人を助けることができるのは魔術治療師」とペレジョギン氏。

 

医師に対する不信感

 HSEの報告によると、代替医療を活発に利用している人の中には、一般医療に失望している人も多くいる。「世論」基金が今年6月に行った調査によると、回答者の53%がロシアの医療のレベルを他の先進国のレベルより低いと考えている。そのため、病気になって病院に行く人がロシア人のわずか32%で、残りが自己治療を好んでいるのかもしれない(3月調査)。病院に行かない主な理由としては、予約の難しさ、それまでの経験、医師の資格の低さ、医師に対する恐怖心と不信感などがあげられている。代替医療の関係者に対する要求はそれほど高くない。需要が高いため、関係者は増え続けている。

 「社会が不安定であるほど、まやかしが増える。フランス革命や1917年ロシア革命の時、妖術や霊媒がさかんだった。このようなものすべては神経症的な土壌のあるところで繁栄する。海外と同じように、ロシアでもこのような状況が今あるということ」とペレジョギン氏。

 

*以下の記事を参照。

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OMI調査

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