ロシア人女性は派手な濃い化粧をし、かなり刺激的な服を着ている。少なくとも、外国人の目にはそう映っている。 =DepositPhotos撮影
世界的な広告代理店のロシア法人「DDBロシア」は、フランス生まれの化粧品ブランド「ロック(RoC)」のテレビ・コマーシャルをロシア向けに用意したことがある。フランスで流れ、評判が良かったこのCMは、ロシアでは信頼性でも好感度でも評価が低かった。
男性の目を釘付けに
CMの中で女性が鏡に映る自分を見て、クリームの効果に満足する瞬間に、両国の反応の差が現れた。フランス人女性にとってはこれで十分だが、ロシア人女性にとって肝心なのはその後で、まわりの人がその効果を認めるシーンが足りなかったのだ。
CMの最後に男性を登場させ、主人公の女性をうっとりと見つめさせたところ、ロシアの女性視聴者たちはすぐに触発され、CMの好感度、説得力、信頼性の指標も一気に上昇した。
業界の専門家によると、ロシア人女性の考える「美」と、西側諸国の女性の考える「美」の違いとは、正にここなのだという。
ヨーロッパ人女性にとってもっとも重要なのは、まわりを気にせず、楽に自然体でいられること、好きな自分でいられることだ。このような考えから、自然の美を強調するように、毎日動きやすい服を来て、薄化粧程度で抑えている。
一方で、ロシア人女性にとってもっとも重要なのは、毎日の外見が完璧なことで、まわりの人に自分が一番美しいということをアピールすることなのだ。これにより、ヨーロッパ人が評価するところの、派手なメイク、高いヒール、セクシーさを強調する服にいきついてしまうわけだ。
女心の歴史的、文化的背景
サンクトペテルブルクの言語学者で、交換留学生制度でアメリカに留学した経験のあるナタリヤ・ツェリ氏がロシアNOWに語ったところによると、西側諸国の女性がカジュアル・スタイルを好む理由を、多くのロシア人女性が理解できないのだという。
「例えば、アメリカ人女性の服装や化粧などの身なりについて聞いたら、本人たちは活動しやすくて機能的な身なりをしていると答えるはず。でもロシア人に言わせると、だらしない、地味な身なりにすぎないわ」。
なぜこのような美的感覚に行きついたのかについては、たくさんの説明が存在する。第二次世界大戦後に男性が不足していたことから、女性が競争するようになったという人もいれば、社会主義で人より目立つことがタブーとされ、女性らしさを表現できなかった1970年代の反動だという人もいる。
アクセサリー・スタイリストのナターリア・タン氏はこう話す。「ロシア人女性の外見に対するこだわりには、確かに歴史的要因がある。でもソ連の遺産だけじゃなくて、ロシアの土地の半分はアジアに位置しているということも忘れてはいけない。ロシアの芸術、民族衣装、建築には、スキタイ人、モンゴル人、ビザンチン人の影響が残っている。正教の教会、その派手な装飾画、太陽に照らされた黄金の丸屋根は、ロシアの文化コードであり、これが私たちの好みの基本となり、幼少時代から染みついている。ヨーロッパの女性にとっても、中央アジアの女性にとっても、私たちは派手すぎる。誰が正しいということではなくて、異なる文化の人間だということなの」。
魅力増す露ビューティー・サービス市場
市場調査では、ロシア人女性がお金を洋服や化粧品に好んで使う傾向が見えてくる。消費者動向を調査する、大手情報・調査会社「ニールセン」のデータによると、ロシア人女性の81%は自由なお金を服に使い、73%はバケーションに使い、69%は化粧品に使うと答えたという(複数回答)。投資に回すと答えた人はわずか8%だった。
同じく調査会社「ユーロモニター」のデータでは、ロシア人女性が自身の給与のうち化粧品に費やす割合は、ヨーロッパ人女性の割合よりも多い。
女性の化粧品の購入額は、スペイン、ポルトガル、ギリシャで年間約128ドル(約1万1900円)、フランスで約256ドル(約2万3800円)、スイスで約230ドル(約2万1400円)、イギリスで約198ドル(約1万8400円)、そしてロシアで年間約89ドル(約8200円)だった。一見少なく見えるが、ロシアの平均給与は2012年に760ドル(約6万7000円)で、スペインの2715ドル(約25万2800円)やギリシャの2521ドル(約23万4800円)などの、ヨーロッパの平均給与よりもずっと少ないことを考えると、対給与比率は西側諸国の女性よりもずっと高いことがわかる。
ロシアのビューティー業界が、もっとも将来性と収益性の高い業界のひとつとなっていることは、驚きではない。ヨーロッパではビューティー・サービス市場が飽和状態となっているが、ロシアではまだ市場ができて間もない状態で、年間平均5~10%の成長を続けている。1ヶ所の住居ビルに2~3軒のビューティー・サロンを同時に開設することが可能で、営業を続けるに十分な顧客を確保できる。
ロシアがWTOに加盟したため、この市場は海外の大手ビューティー・サロン網にとって、より魅力的になっているようだ。
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