廃炉とバックエンド事業は、世界で拡大している。バックエンド事業とは、放射性物体の安全な廃棄処理を可能にする一連の手順。これには、使用済み核燃料の取り扱い、放射性廃棄物の取り扱い、放射性物体の廃棄処理などが含まれる。経済的には、この市場の規模は2030年までに3500億ドル(約38兆5000億円)ほどになると考えられている。
日本では、「福島第1原発」の事故後、この領域の復旧が必要になっている。ドイツでは、2020年までに、国内の原発17基すべてを廃止しなければならない。アメリカとロシアでは、放射性廃棄物の貯蔵と再処理の問題を解決しなければならない。「バックエンド市場の20%ほどが放射性廃棄物の取り扱いで、廃炉と使用済み核燃料の再処理がそれぞれ40%」と、原子力分野の独立専門家であるアレクサンドル・ウヴァロフ氏は話す。
「バックエンドの広大な課題に体系的に取り組めているのは、今のところ、ロシアのみとなっている」と、ロシア・エネルギー連合のセミョン・ドラガリスキー理事は話す。
「日本は、ロシア極東が原子力遺産の処理を行おうとしていた時、ロシア側に救いの手を差し伸べてくれた。今度はロシアが、バックエンド分野の一連の問題解決において援助しようとしている」と、ロシア国営原子力企業「ロスアトム」発展・国際事業本部のキリル・コマロフ第1副本部長は話す。
日本のバックエンドにおいて、最も規模が大きいのは福島第1原発である。この原子炉の作業は、事故が起きていない原発の閉鎖と廃炉の数倍大規模で、高額で、困難である。経済的には、日本のバックエンドは今後15~20年で1000億ドル(約11兆円)ほどになる、という試算もロスアトムにある。
ロシアでは2008年、冷戦と核開発競争の時代から残り続けていた、大量の放射性廃棄物と使用済み核燃料をめぐる、大変な状況があった。放射性廃棄物の総量は5億立法メートル。しっかりとした隔離が確保されておらず、人と環境への脅威になっていた。使用済み核燃料でも、同様に困難な状況があった。大きな原子力施設の貯蔵庫はほぼ満杯で、使用済み核燃料の総量は1万8500トンまで蓄積されていた。2008年に、この「遺産」を除去することが決定された。2011年までに、使用済み核燃料「乾燥」貯蔵庫の第1ラインが、クラスノヤルスク地方に建設された。施設は昨年末までには完工していた。ここでは、使用済み核燃料は、一般的な水中ではなく、乾式容器に貯蔵される。いまだに原発の施設に貯蔵されている使用済み核燃料の大部分が、徐々にここに搬入される。
貯蔵以外にも、処理の問題も解決された。規格外核燃料や欠陥核燃料の取り扱い技術が開発、導入された。ロシアの生産合同体「マヤク」の再処理工場はここ数年で、技術革新を成し遂げ、現在は一部研究用原子炉の特別な使用済み核燃料を受け入れることができている。
ロスアトムの実績は、日本で需要があることが判明した。世界中のほぼすべてのバックエンド関連企業が、日本に結集、競争している。ロスアトム傘下の連邦国営単一企業「放射性廃棄物取扱企業(RosRAO)」は今年にも、福島第1原発のトリチウム汚染水の浄化装置の試験を始める。現在、世界には、実用可能なトリチウム汚染水の浄化手段がない。トリチウム汚染水は、福島第1原発の主要な問題の一つとなっている。
ロスアトムは昨年11月、バックエンド分野の自社技術を紹介するセミナーを東京で実施した。日本の「JFEエンジニアリング」の井田博之主任研究員はこのように話した。「このような行事はとても重要。ロスアトム社にどのようなバックエンド分野の技術があるかがわかるようになった。バックエンドについては、従来から、アメリカ企業およびフランス企業と協議しているが、ロスアトム社の内容もとても印象的だった」
「福島原発向けのトリチウム汚染水の浄化設備についての詳細は、とても興味深かった。あとは使用済み核燃料の処理の可能性についての話も、大きな関心を呼んだ。両国の協力が発展することを期待する」と井田主任研究員。
ウヴァロフ氏はこう話す。「ロシアには放射性廃棄物の取り扱いの分野で、他の国にはない、超最新技術と専門知識がある。例えば、ロシアの原子力関係者が数十年携わっている地下埋蔵プロジェクト。そのため、ロスアトムの提案は、バックエンド分野で多くの点で比類なきものとなっている」
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