これまで唱えられてきたオホーツク海の深海生物の少なさと同種性を、研究者は否定した。ソホバイオのマリーナ・マリュチナ副隊長によると、クリル海盆に生息する生物は約1000種で、これまで知られていたのは50種ほどのみ。この時、半数以上が、科学にとって新しいものだという。具体的には、単細胞生物、腔腸動物、甲殻類、軟体動物、棘皮動物、さまざまな蠕虫や魚である。新たに発見された生物の種類の多くは、南極および大西洋の深海種に類似している。
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クリル海盆南東部の深海動物相と太平洋の深海動物相の種類が、多くの面で類似していることに、研究者は驚いている。「驚きなのは、太平洋の動物相が古代からのものであるため。数百万年に渡って進化した。極東海域の深海盆については、比較的新しく、かなり困難な地質学的歴史を有している。これらは氷河と完全分離の時代を乗り越えてきた」とマリュチナ副隊長。
研究が行われたのは、水深3500~6000メートルの深海帯。水圧は気圧の750倍で、真っ暗である。
この深海帯の主な生物は数ミリの生物。従来型の採集器では捕獲するのが困難である。ソホバイオの研究者は特別な設備を使い、1~10ミリ、また1ミリ以下の海洋生物を大量に調査船「アカデミク・ラヴレンチエフ」に引きあげることができた。また、魚を含む、1センチ以上の大きな生物も発見した。
今回の活動の資料は今後、ロシア、ドイツ、日本の機関で精査される。研究者によると、完全な描写には数年かかる可能性があるという。調査活動の際、新たな「種」だけでなく、未知の「属」、新たな「科」まで発見された。ただ、研究の最初の結果の公開は2年後になる予定。
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また、採集されたサンプルについては、医薬品の開発のため、生物活性物質の同定が行われる。ウラジオストクの生物有機化学研究所はすでに、抗炎症剤、抗がん剤、一部海洋生物からの栄養補助食品を開発している。
2016年には、第4ロシア・ドイツ共同調査隊「クラムバイオ2」(クリル・カムチャツカ生物多様性研究2)が、新しいドイツの船「ゾンネ」で出発する予定。クリル・カムチャッカ海溝の最大深さ約9500メートルで、動物相を調査している。ちなみに、地球上の最も深い場所であるマリアナ海溝の深さは、約1万1000メートルである。
「ソホバイオ(オホーツク海生物多様性研究)」調査は、ロシア・ドイツ共同研究の第3段階である。ソホバイオの枠組みの中で研究されたクリル海盆は、日本海に近い深さ(3374メートル)であるが、太平洋および、ブッソリ海峡(2400メートル)、クルゼンシテルン海峡(1920メートル)の深海峡と連結し、さほど孤立していない。これまでほとんど研究されておらず、ロシアとアメリカの船によってサンプル採集が前世期に数回行われただけである。ロシアから調査に参加したのは、ジルムンスキー海洋生物学研究所、イリチェフ海洋学太平洋研究所、その他多数機関の研究者。日本から調査に参加したのは、東京大学大気海洋研究所、海洋研究開発機構の研究者。
絵1 深海では、誰もが知っているタコ、ヒトデ、エビや、想像を超える奇妙な形をした他のたくさんの生物に出会う。例えば、この細く、曲がったワレカラは、枝にしっかりとくっついており、わきを流れる小さな生物を大きなハサミでとらえる。
絵2 深海のウニはその変わった形ともろさで生物学者を驚かせる。
絵3 深海のセンジュナマコは、ナマコに非常に近いものの、冗談で「海の豚」と呼ばれている(個別の類似性により)。
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