壁を通して物を見ることのできる革新技術「イモノクリ(#emonocle)」を開発したのは、クリミアにあるロシアの技術企業「EMIIA」。このシステムは物体が動くと無線波が変わるドップラー効果を利用している。「これはモノビジョンで、チップ・ベースのアルゴリズムを使った電子の目。モバイル、機器、技術品にインポートすることが可能」とウラジーミル・スタロスチン社長はロシアNOWに説明する。
開発者によると、このシステムは軍事、民間のどちらの用途でも使えるという。非常事態省ががれきの下にいる人を捜索する時に使ったり、ガス漏れ、温度、あらゆる動きを察知できることから、自宅が留守の時の警備に使ったりできるという。ハードウェアおよびソフトウェアのソリューションの価格は民間の用途の場合でわずか15ドル(約1800円)。
同社は2016年までに、30~50メートルの距離から壁を通して動きをスキャンする、グーグルグラスのような特殊なメガネを開発したいと考えている。兵士はこのようなメガネをかければ、敵がどのような建物の中に潜んでいても、シルエットと動きをキャッチすることができる。
国内外の開発者はこれまでに、光学的に不透明な障壁を通して見る技術を開発している。2014年からはロシア軍で壁の後ろの動きをキャッチできるレーダーの試験が行われている。だが、可視距離は3メートルほどだ。アメリカでも半年前、原理の異なるシステムの試験が始まった。特殊部隊が携帯電話のようなセンサーを建物の各壁に装備すると、センサー同士が相互作用しあい、無線波をつくり、スクリーンに画像を出力する。
「当社製品の明らかな優位点は、移動性、距離、価格の安さ。すべての情報がウェアラブル・エレクトロニクスに出力される。類似品よりも安い。特におもしろく、将来性があるのは、モノのインターネットでのイモノクリの活用」とスタロスチン社長。スウェーデンの市場調査会社「ベルク・インサイト」の予測によると、モノのインターネットの市場は2025年に19兆ドル(約2280兆円)に達するという。
スタロスチン社長によると、開発の目的は何よりもさまざまな状況での人命救助だという。「一般市民の誰もが他の人の生活を覗けるようになるような製品をつくる気はない。民間利用ではアルゴリズムを削除し、可視情報に制限をかける」
スタロスチン社長によると、不安定な経済状況、クリミアの地位の変化によって、開発作業には困難が伴っているという。「クリミアがロシアに編入されてから、自力での前進を可能にしていた事業を失ってしまった。クリミアでは今日、何らかの融資を受けることがとても難しい。今のところ、ここには完全な金融システムがなく、資金調達で制限を受けている。ベンチャー企業はない。この金融的砂漠では、自分たちに期待することしかできない」
ドイツやアメリカから開発への関心が向けられているものの、情報の完全な保管を確保するために、ロシアで製造を発展させたいのだという。このプロジェクトへの世間の注目は、プロジェクトに害を与えたのではないかと心配する。「技術作業ではなく、大切なことへの集中を不可能にするような不要な活動に資金を使わなくてはいけなくなる」とスタロスチン社長。
開発者は、同社の技術が世界を変えると確信する。「妄想しているわけではなく、実際に見える。市場が崩壊し、すべてが変わる。世界規模でプロセスをとめることは不可能。これは資本を含めた世界の経済関係の構造を丸ごと変え得るもの。これは消費者経済から情報経済への変換の刺激となる」とスタロスチン社長。
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