遺伝子は子どもの成績決定づけず

画像提供:Shutterstock/Legion-Media

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一定の児童が他の児童よりも優れた成績を取るのはなぜなのか。研究者が世界の1万3000人の双生児を分析した。

 新しい知識を得たいという知的好奇心または学習意欲は、しばしば多くの子どもに不足している。学習意欲はどのように生じるのか。遺伝子と環境はここでどのような影響を与えているのか。トムスク国立大学の研究者が、イギリス、アメリカ、日本、ドイツ、カナダの研究者とともに、この疑問の答えを見つけようとしている。6ヶ国の学校に通う双子の児童1万3000人のデータを分析したところ、非常に類似した結果が出た。

 

同じ遺伝コードでも異なる意欲

 トムスク国立大学国際認知・心理遺伝学研究所はすでに何年も、子供の学習能力発達の根底にある、感情や意欲に与える遺伝子と環境の影響を研究している。今年2月には研究結果を説明する論文を、「性格特性・個人差(Personality and Individual Differences)」誌に掲載した。

 トムスク国際人間発達研究センターのユリヤ・コヴァス所長は、ロシアNOWにこう説明する。「まったく同じ遺伝コードを持ち、同じ家庭で育ち、同じ学級で学んでいる一卵性双生児でさえも、学習意欲に大きな差が出ることがある。二卵性双生児すなわち2つの異なる卵子から胎児となり、遺伝的に同一ではない双子になると、意欲はもっと違ってくる」

 これらの事実は、遺伝子に意味がありながらも、意欲を決定づけることはなく、環境の影響もふつうは個人ごとに違うことを示唆している。つまり、研究者によると、同じ遺伝子が同様の環境において、異なった発揮の仕方をするのだという。

 

世界規模の研究

 世界にはそれほど多くの双子はいない。コヴァス所長によると、人口の1%ほどだという。研究者が関心を持っているのは、同じ家庭で一緒に暮らし、同じ学校で学んでいる双子。このような双子のおかげで、「数学不安」すなわち数学嫌いという現象も調査することが可能となっている。

 4年前、トムスク国立大学の研究所を基盤に、ロシア学校双生児登録所が設立された。ロシアで行われる他の研究と同様、登録所は広域な国際ネットワーク「INRICHD(国際小児保健発育研究ネットワーク)」の一部となっている。異なる文化や背景における児童の初期発達を研究することの大切さが、協力の拡大をうながしている。例えば、登録所はイギリスの同様のプロジェクト「双生児初期発達研究(Twins Early Development Study)」と、活発な協力を行っている。

 なぜ児童の学習意欲や学力を世界規模で研究し、各国のデータを比較することが、それほど重要なのだろうか。「数学を含めた、児童の学習能力の低下が、国家規模の景気後退につながる可能性を示すデータがある。この分野で児童のモチベーションのメカニズムを理解することが重要となっているのは、そのため。また、この研究がわずかながらでも児童の成績向上に寄与すれば、その変化が社会の大きな改善の始まりとなる」とコヴァス所長。

 

数学と他の科学

 研究者は児童の数学力の研究から始めた。各国の教育プログラムは異なっていても、数学言語は世界のどこでも理解されるため。プロジェクトは後に拡大し、今では興味、意欲、文化的特性という教育プロセスが丸ごと含まれている。

 トムスク国際人間発達研究センターの関係者は今年、別のプロジェクトに着手した。受胎の瞬間や小学校にあがる前から、児童の発達を観察することになる。これは国内唯一のプロジェクト。児童心理学の分野で、これほど大規模で多くの要因を考察する研究は、国内には事実上存在していない。

 「生物学的要因、社会的要因、出生前後の要因を含め、子どもの人格に影響を与えるさまざまな要因を研究している。早期のプロセスがその後の発達に非常に重要であることを、科学はかなり前から証明している」とコヴァス所長はロシアNOWに話した。

 研究の最初の段階には、出産を控えたトムスクの600家族が参加する。半数の家庭が、人工授精により受胎している。将来的には、数千家族に増やす計画。ロシアの異なる地域の家族が、プロジェクトに参加する可能性がある。

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