米露原子力協力からの独立

ミハイル・モクルシン/ロシア通信撮影

ミハイル・モクルシン/ロシア通信撮影

ロシアはアメリカの支援なしに、独自に自国の核施設の安全を保障していくことを決定した。とはいえ、ロシアが世界の原子力安全分野において、アメリカと協力を続けていくことに変わりはない。アメリカは昨年、この分野での協力を縮小すると発表していた。

 アメリカ「ボストン・グローブ」紙の19日付けの記事によると、ロシアは昨年12月中旬、自国の核施設の安全保障におけるアメリカとの協力を停止することを決定していたという。そしてアメリカも合意した。アメリカ国務省は昨年3月、原子力分野におけるロシアとの協力を制限することを決定していた。 

 一方で、ロシアの国営原子力企業「ロスアトム」は22日、アメリカとの国際的な協力が今年も続くと正式に発表した。「ロシアとアメリカは、核物質の安全および完全な保管を保障し、テロ組織に渡ることを防止し、信頼性の高い物理的な保護を行うことに、特別な責任を担っている」

 

同権ではなかったパートナーシップ

 「ロシアに困難な経済状況と社会的混乱があった1990年代、核物質の安全性の問題は極めて重要であった。これは欧米の一定の懸念を引き起こした」と、軍備・エネルギー・環境管理研究センターのアナトリー・ジヤコフ主任研究員は説明する。

 「ナン・ルーガー計画」すなわちロシアとアメリカの「共同脅威削減計画」は、1992年に承認された。その方向性の一つは、アメリカ、ロシア両国の資金による、核物質の安全・保護体制強化。

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 その結果、ロシアの原子力企業には新たな設備が登場し、核物質の管理システムが大幅に改善した。「他にも、ロシアの経済状況が改善したことや、ロスアトムと国防省が原子力企業の保護システム完成に尽力したことがこれに寄与した」とジヤコフ主任研究員。

 アメリカはロシアの核施設の保護に融資しながら、その支出を管理するために査察権を得たが、ロシアにはアメリカの核施設への同等の調査権がなかった。これにロシア政府は不満を感じ、不平等なパートナーシップと評した。

 ロシア政治研究センター「ロシアと核不拡散」プログラムのアンドレイ・バクリツキー責任者はこう話す。「1990年代は、ソ連の原子力施設から闇市場に核物質が流れることを防止するのが主たる問題だった。そのためロシアは、ほぼあらゆる条件の支援を受ける構えだった。今日は、自力で施設の安全を維持できるような技術と資源があるため、受け身になりたがらない」

 2013年に作業の大部分が終了し、ナン・ルーガー計画も完了した。代わりに登場したのは、「核の脅威を削減するための新たな二国間枠組み合意」。

 ジヤコフ主任研究員によると、ロシアはかなり前から自力で活動し、自国の費用で原子力施設の安全性を確保するようになっていたという。ロシアは科学分野における協力をアメリカに提案し、またアメリカの核施設の視察にも関心を示した。しかしながらアメリカは、そのような協力を拒否したという。

 

ウクライナはいかに関係しているのか

 専門家によると、ウクライナ情勢を受けたロシアとアメリカの関係悪化は、二国間協力停止の主な理由ではなかったという。対ロシア経済制裁は、アメリカからの支援なしに核施設の安全確保を自力で行うというロシアの決定を、加速させただけである。2010年の核セキュリティ・サミットでロシアは、それぞれの国が自国の核物質の安全性に責任を持つべきであると表明していた。

 アメリカは昨年のウクライナ情勢を受けて、原子力分野を含む、ロシアとの科学・技術協力の一部を凍結した。これによって、研究炉の高濃縮ウラン燃料を第三国から搬出するロシアとアメリカの共同プログラムの実現など、多くの重要なプロジェクトが打撃を受けた。

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 「プログラム開始から2016年の完了までに、高濃縮ウラン2.5トンが搬出されなければならない。理論的には核弾頭100個の製造に十分な量」と、ロシアエネルギー・安全保障センターの所長で、ロシア連邦安全保障会議科学評議会の会員であるアントン・フロポコフ氏は話す。

 ロスアトムによれば、プログラムは世界規模で兵器材料を大きく減らしたという。「このプログラムや他の協力プログラムは、ロシア・アメリカ大統領委員会の枠組みの中で、原子力エネルギーおよび原子力安全に関する作業部会によって管理されていた。しかしながらアメリカ国務省は20143月、そのウェブサイトのメッセージによって、この大変効果的に思えるメカニズムの枠組みの中での作業を停止すると通告してきた」

 「ワシントンが原子力安全分野におけるクレムリンとの協力継続に関心を持っている場合、それは同権であるべき」とジヤコフ主任研究員。専門家の考えでは、ロシアとアメリカは原子力安全分野での協力継続のために新しい形式を模索することになる。そしてこれまでの経験が将来役立つ可能性があるという。

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