ロシア海軍総司令部の関係筋はこう話す。「無人機は空中だけではなく、海洋活動や沿岸部隊の効率を高めるために、水中でも使われるようになる」=セルゲイ・クゼネツォフ撮影/ロシア通信
グライダー型潜水艇で水中警備
このグライダー型潜水艇は推進器なしで動く。魚雷をほうふつとさせる外観の機械の内部には、2ヶ所にわかれた気密チャンバーがある。これは空気のチャンバーと、バルブを開けた時に空気を圧縮する液体のチャンバー。空気を減らすことで潜水し、液体がもとに排出されて浮上する。進行方向は翼や、内部で動くバラストで変えることができる。
進行速度はこの時、時速2キロメートル。動く時のエネルギー消費量は多くない。これによって潜水艇は自律モードで数ヶ月活動可能。
開発が行われていることは、「合同船舶建造会社」国防注文部のアナトリー・シュレモフ部長が、2012年に伝えていた。当時はどのような潜水艇なのか、ロシア軍にいつ導入されるのかは不明だった。
その目的は「ロシアの北極圏など、海軍の他の軍備を作戦的な海洋モニタリングのために使うことが妥当でない、あるいは使うことが不可能な場所で、モニタリングを行う」ことである。潜水艇は海洋情報収集に使用される、海軍の海面ブイを発見することも可能。
海軍は関心を持つ
水深300メートルで活動でき、秒速0.3~0.5メートルで進み、90日間充電せずに動くこの潜水艇の入手を、国防省は希望している。7キログラムまでの情報収集用機器を搭載することも可能で、全地球的航法衛星システム「GLONASS(グロナス)」も装備される。遠隔操作の可能距離は最大15キロメートル。
ロシア海軍総司令部の関係筋はこう話す。「無人機は空中だけではなく、海洋活動や沿岸部隊の効率を高めるために、水中でも使われるようになる」
サラトフ国立工科大学情報計測技術学部のエヴゲニー・タタレンコ教授は、大学がすでにボルガ川で小型潜水艇の試験を行い、秋にはより大型の試験を予定していることを話した。「海軍は我々の潜水艇に関心を示した。今のところ、いかなる合意もなされてはいないが。9月に作業水深1キロメートルでの試験も予定されている」
「潜水技術科学・生産企業『オケアノス』」のボリス・ガイコヴィチ氏は、海外ではグライダー型潜水艇が1980年代末に登場したと話す。アメリカとノルウェーの商業プロジェクト、アメリカとフランス・ドイツの軍事プロジェクトがある。
ヴィクトル・クラフチェンコ元海軍将官は、ロシア海軍での用途も同じようなものになるだろうと話す。
「通過する船舶や潜水艦など、状況を監視するために使うことができる。得られた情報は沿岸部で分析される。さまざまな水深の塩分、水温、流れ、音響チャンネルなど、海洋研究も海軍にとって優先事項」
無人機の時代はまだ訪れていない
ウラジーミル・ザハロフ元少将は、このような潜水艇にはさほど期待していない。ロシア軍での無人機使用はまだ出だしの段階に位置していること、海洋の環境には予期しないことがたくさん隠れていることをその理由にあげる。
「今のところ、海軍で活用できるところはない。まだそれほどのレベルに達していないし、無人機は空で使われるようになったばかり。水中にははるかに問題が多い。船舶を見つけるなら潜水艇を使わなくても、探知機で十分」
ガイコヴィチ氏は、少量生産のグライダー型潜水艇の価格について、1隻10万ドル(約1000万円)ほどになる可能性があると考える。ロシア海軍用の開発費として、1億6170万ルーブル(約4億8510万円)配分されている。
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