科学アカデミーの研究者たちの今後

写真提供:ロシア新聞

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ロシア科学アカデミーの改革法案が可決された。改革の目的は、科学的活動とアカデミー所有の財産の運営を分割すること。役人はこれによって、科学を“不要な問題から解放する”ことができると考えているが、一方、研究者はこれによって、役人に依存しなければならなくなり、科学の発展が行き詰ると考えている。

 政府は6月28日、連邦法案「ロシア科学アカデミー、国営科学アカデミー再編、個別のロシア連邦法令の改正について」を、下院(国家会議)に提出した。 下院は9月18日、この法案を最終審議となる第3読会で可決。ウラジーミル・プーチン大統領が9月27日に、法案に署名を行った。

 

改革の骨子 

 これによって、ロシアでは科学の基盤とされている、科学アカデミーの徹底的な改革が実現することとなる。可決された法案の主な規定は2つ。

1. 「ロシア医療科学アカデミー、ロシア農業科学アカデミーなどが、本連邦法発効日よりロシア科学アカデミーに統合される」。

2. 「ロシア科学アカデミー、ロシア医療科学アカデミー、ロシア農業科学アカデミーなどの管理下にあった組織は、その組織に割り当てられている連邦財産の所有者の機能と権限を実現するため、ロシア連邦政府が特別に委任する連邦執行機関に管理される」。(連邦科学組織庁がこの連邦執行機関になることがすでに明らかとなっている)。

 すなわち、改革の主導者(プーチン大統領が改革実施の政治的決定者であることに疑いの余地はない)の主な目的とは、科学アカデミーの上層部を、研究費用の配分や予算編成から引き離すことである。

 

予算編成に関与できなくなる科学アカデミー 

 科学アカデミーの財産は巨大だ。研究者だけでも4万8000人が働く、科学研究所と科学機関436ヶ所を含んでいる。また農業科学アカデミーには学術機関198ヶ所、科学サービス機関300ヶ所以上、医療科学アカデミーには科学教育施設33ヶ所がある。

 より正確に言うと、科学アカデミーはただ予算編成に関与できなくなっただけでなく、特別な政府機関に費用の伺いを立てたり、基礎科学にかかった費用の報告書を上げたりしなければならなくなった。アカデミーの関係者らは、この改革を役人による研究への干渉ととらえている。

 政府は法案を下院に提出する直前に、さらなる修正を行った。6月28日の提出前、新科学アカデミーの新たな会員選出に、3年の停止期間を設けた。科学アカデミーは昨年12月に、定例の選出について発表している。研究者らは結局この停止期間の前に、新たな会員の最後の受け入れをするよう求められた。立法者は規定の例外を認めないらしい。潜在的な候補者が、選出の機会を失ったことに、同情することしかできない。

 

不動産などの財産を没収することが唯一の目的 

 アカデミー関係者側が主張している、政府法案の3点の”致命的な”問題とは、次の通り。

1. 科学アカデミーが研究分野の選定を独力で行えなくなる。

2. 国の役人が科学アカデミーの財産を効率的に運用することは無理であり、不動産を中心とした財産を”没収する”ことが唯一の目的。

3. 科学アカデミーの改革案を作成する際に、アカデミーの関係者に相談を行わなかった。

 政府法案が第3読会で可決される前、ロシア科学アカデミー研究員会議「ロシアの科学の今と未来」(今夏創設された社会組織)は、科学アカデミーの関係者 に向けて、緊急発表を行った。ここには特に、次のような記述がある。

「ロシア連邦国家会議は9月17日、ロシア科学アカデミーを崩壊させ、ロシアの科学と国全体に修復不能な損害をもたらし得る前代未聞の決定を行おうとしている。大統領府は連邦会議に法案第305828-6号を提示した。科学の指揮をとれない、新たに創設されようとしている官僚機構に、ロシア科学アカデミーの研究所を渡そうとしている」。

 

新設される連邦科学組織庁と科学・調整評議会が活動を決定 

 一方で、さほど懸念していないアカデミー関係者の一部は現在、アカデミーの財産の所有者の機能を果たす、連邦科学組織庁についての規定の作成で忙しい。 公にはなっていないものの、実際に活発な作業が進められている。

 ここでの科学アカデミーにとってもっとも重要な項目は、「連邦科学組織庁は科学・調整評議会の合意を得て、今後の活動についての決定を行う」である。

 さて、その科学・調整評議会は、「外国を含め、科学機関や国の組織で働く、 世界的に認められた研究を行う一流研究者」で構成される。

 

アンドレイ・ワガノフ、「独立新聞」副編集長

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