プーチン大統領とカリモフ大統領、2015年10月16日=
ロイター通信ウズベキスタンのイスラム・カリモフ大統領が入院していることは、8月29日に明らかとなった。1990年代初めの独立達成から26年以上にわたりウズベキスタンの指導者を務めているこの78歳の政治家の息女であるローラ・カリモワ=チッリャエワ氏は、同大統領が脳出血のために入院して集中治療を受けているとのコメントを添えた自身の家族の写真をインスタグラムへ投稿した。
その日の晩、中央アジアを専門とするメディア「フェルガナ」は、この高齢の政治家の逝去について報じた。ウズベキスタン当局は、この情報を否認し、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシアはカリモフ氏が生存していることを前提としている、と声明した。しかし、専門家らは、たとえ同大統領が生きているとしても、その統治時代は幕を閉じようとしている、と考えている。
CIS(独立国家共同体)諸国研究所のコンスタンチン・ザトゥーリン所長は、ウズベキスタンで生じている状況がソ連においてヨシフ・スターリンが死去した1953年の状況に似ている点を指摘し、「政権争いは、スターリンが中風に冒されながらもまだ生きているうちに始まり、これと似たことが、ウズベキスタンでも生じており、エリートは、誰がカリモフ氏の後継者となるかを見極めようとしている」と述べる。
同氏は、カリモフ氏が、ウズベキスタンで事実上無制限の権力を恣にしてきたものの、これはという後継者を有していなかった、という点を指摘し、「カリモフ体制のような専制君主体制の主な欠点は、いくら安定していても後継の問題に弱いという点にある」と述べる。同氏によれば、それは、程度の差はあれ、カザフスタンやタジキスタンといった他の中央アジアの国々についてもいえることであり、これらの国は、早かれ晩かれ、「永遠の」大統領の退場後のエリートの交替というウズベキスタンと同様の問題に直面することになる。
モスクワ国立国際関係大学の教授でロシア科学アカデミー・東洋学研究所の主任研究員であるイリーナ・ズヴャゲリスカヤ氏は、ウズベキスタンがカリモフ大統領の退場後に直面する問題は、地域にとってかなり典型的で深刻なものとなる、とし、「それは、イスラム主義、過激主義であり、それは、若者の多さ、伝統主義的な生活様式、貧困、失業である」と述べる。
中央アジアは、「タリバン」や「イスラム国」(ロシアで禁止されている)が活動しているアフガニスタンと国境を接しているため、今のエリートが退陣した後に到来する政変の時代にテロリストらが地域へ流入する危険がある。コンスタンチン・ザトゥーリン氏は、まさにウズベキスタンはイスラム原理主義の拡がりという観点から極めて問題のある国である、とし、「イスラム教は、遊牧民族である隣りのカザフ人におけるよりも定住民族であるウズベク人においてのほうが厳格かつ過激なものであった」と述べ、アフガニスタンの戦闘員らが中央アジアを経由してロシアへ到りうることを懸念している。
専門家らは、中央アジア諸国は、安定した国家統治が行われる場合にのみ、地域が直面する問題に対処しうる、と考えており、イリーナ・ズヴャゲリスカヤ氏は、エリートは、合意形成の能力を発揮すべきである、と主張する。
同氏は、隣国のトルクメニスタンで2006年にサパルムラト・ニヤゾフ終身大統領が死去した後にエリートがグルバングルィ・ベルドィムハメドフ氏というすべての人を満足させる新大統領候補を迅やかに推挙できた点を指摘し、「私は、エリートを構成する派閥が何らかの歩み寄りを見い出すと思う」と述べる。
コンスタンチン・ザトゥーリン氏によれば、ロシアは、中央アジアの安定を強く望んでいるので、そうした安定を保障する能力を発揮するリーダーらを支持する。その際、それらの人が自国を維持できるならば、ロシアにとって、カリモフ氏やナザルバエフ氏(1990年からカザフスタンの大統領)やラフモン氏(1994年からタジキスタンの大統領)の後にまさに誰が政権の座につくかは、さして重要ではない。
イリーナ・ズヴャゲリスカヤ氏は、ロシアには政治的な支持のほかに中央アジアへ影響を及ぼす手段があまりない点を指摘し、「危機のために、ロシアは、投資や合弁企業の規模で胸を張ることはできない。この地域では、主として、中国が、それに携わっており、今のところ、ロシアは、中国と対等に張り合うことができない」と述べる。さらに、同氏は、ロシアと中央アジア諸国の関係における最大の「切り札」は、まさにこれらの国の出身者が大勢ロシアで働いているということである、という点を指摘し、「こうした近しさを今後も保ちさらに深めることが是非とも必要である」と語る。
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