欧米のマスコミが、シリアのラタキアから内陸部にロシア製大砲システムが移送されている、と伝えている件について、ロシア政府はコメントしなかった。(関連記事)
「CNNが混乱した可能性がある。プーチン大統領とエリツィン大統領を間違えるぐらいだから」と、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は6日、記者団に話した。(関連記事)
セルゲイ・イワノフ大統領府長官は先月30日、ロシアがシリアのバシャール・アサド大統領の要請にもとづいて、シリアで空爆のみを行う予定だと話していた。
ロシア国際問題評議会の専門家ニキータ・メンドコヴィチ氏は、ロシアNOWの取材に対し、シリアでの現在の任務は地上戦を要求するものではないため、ロシアは可能性も検討していない、と話した。「ロシアの目標は、合法的なシリア政府軍を支援して、『イスラム国(IS)』の脅威を低減すること。最初の数日間の作戦で、空爆によって大きな戦術的成功を収められること、夏の危機の後で前線を安定させられることが示された」とメンドコヴィチ氏。CNNの報道については、こう話した。「これは恐らく、軍事契約の枠組みの中でシリア軍に供給された武器のことだろう。これはシリアの大砲で、ロシアのものではない」。
地上干渉の資源はない
非営利・非政府機関「ライフボート基金」の専門家ウラジーミル・フルスタリョフ氏は、CNNの伝えた兵器と軍事技術品の量は、定期的にアサド政権に提供される兵器ロットの量を超えないと話す。「ロシアの地上部隊はすでにシリアにいる。少なくとも、軍団と空軍基地の機能を確保する資材はある。地上戦の見通しについては、確証はない」。
アラブ学者で経済高等学院政治学部のレオニド・イサエフ講師は、地上戦なしにISに勝利することはできないと話す。「空爆支援は、シリア政府軍がすでにコントロールしている地域を維持するのに役立つだけ。シリア政府軍はここ数年、大きな損失を被っており、これ以上は限界。これ以上を目指すなら、シリアに地上軍を送る必要がある」。だがイサエフ氏によると、ロシアには地上干渉の各種資源が足りないという。「また、ロシアのシリアへの関与が増すほど、欧米、サウジアラビア、トルコの反応が強くなるため、アサド大統領に害を与えてしまいかねない」。重要なポイントとしてイサエフ氏は、ロシア政府がソ連の過ちを繰り返したがらないことを指摘する。「ロシアはある時期まで来たら、空爆を縮小し、シリア情勢に深入りしないようにする可能性もある」。
軍事政治学協会のワシリー・ベロゼリョフ共同会長は、「ロシアのシリア領空における関与度は、ISに深刻な打撃を与えるほどのものであるため、これで十分」だと強調した。
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