未承認のルハンシク人民共和国は5日、ウクライナ軍による緩衝地帯からの口径100ミリ以下の兵器の撤去が始まったことを認めた。ルハンシク人民共和国自体が軽火器の撤去を始めたのは3日のことである。この措置はパリの協議で合意された。ミンスク和平合意の履行以外に代案なしというのが、協議の主な結論である。
パリの合意は、参加者によれば、紛争当事者の譲歩を求めているという。南東部のドネツィク人民共和国およびルハンシク人民共和国は今のところ、ウクライナの統一地方選(10月25日)とは別に、独自の選挙を実施しようとしている。パリでは両共和国に対し、この計画を見直し、ウクライナ法に則った選挙を実施するよう勧告がなされた。同時にウクライナ政府に対し、南東部の幹部と調整しながらこの地域の選挙に関する特別法を採択し、ウクライナ憲法で南東部の特別な地位を定め、紛争地域の関与者の恩赦を宣言するよう勧告がなされた。
両当事者には、今回確認されたミンスク合意を履行する用意があるのだろうか。複数の専門家によると、これは主に、ウクライナ政府に対する懸念だという。というのも、南東部は選挙の時期と実施方法において歩み寄るのがより容易だから。
「南東部が選挙日の変更を含めた、和平合意の政治部分を履行するのは、ウクライナ政府よりも楽。(中略)ウクライナ政府にとってこれは政権の安定、国内の安定の問題になる」と、ロシア国立研究大学「高等経済学院」欧州研究センターの専門家、マクシム・ブラテフスキー氏はロシアNOWに話す。
国際政治鑑定研究所のエヴゲニー・ミンチェンコ所長は、選挙の問題で妥協案を見つけることは十分にあり得ると話す。ウクライナの政党や地方の政党の参加のない小選挙区選を、南東部で実施することもできる。
ペトロ・ポロシェンコ政権には、南東部の情勢に対するかけひきの余地があまりなくなってきていると、専門家。「ポロシェンコ大統領は(パリの協議で)西側から100%の支持を得られなかったという憶測がある。どうやら、政治的プロセスなしに、ミンスク合意を分割する(中略)、また何かを履行して何かを履行しないというのは、うまくいかないと、指摘されたようだ」とブラテフスキー氏。
ミンチェンコ所長の考えでは、「ヨーロッパ側はポロシェンコ大統領の無条件支持から、かなり批判的に受け止める方へと、またポロシェンコ大統領が自分たちに約束したことを履行するよう圧力をかける方へと、移った」という。このヨーロッパの立場の「大きな変化」は、「客観的な理由」によるもの。「ポロシェンコ大統領は約束ばかりして何も実行していない」とミンチェンコ所長は説明する。
状況が変わりつつあることに同意するのは、ウクライナの政治学者で戦略研究所「新ウクライナ」の所長であるアンドレイ・エルモラエフ氏。ヨーロッパはポロシェンコ大統領に、「ウクライナ自体の大混乱という代償を払ってでも」行動することを強いていると話す。
パリ計画の実現は、「それなりにしっかりとした停戦と南東部へのロシアの物理的関与の低減」につながる可能性があるという。しかしながら、これは議題から「南東部の将来的な自治化」のプロセスを外すものではない。「ウクライナの連立与党の誰もが、困難で痛みを伴ってもいいから和平プロセスを、という考え方をしているわけではない。『戦争党』もあるし、『小ウクライナ』(南東部のないウクライナ)の支持者もいる。南東部の問題で一貫性と明確なプラットフォームを示していないポロシェンコ大統領も、難しい状況にある」とエルモラエフ氏は和平の道のりにある問題を説明しながらも、ロシアの専門家と同様、これらすべての問題にかかわらず、南東部での戦闘再開を予期する必要はない、と考えている。
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