米露首脳のシリア合意を阻むものは

EPA通信
 ウラジーミル・プーチン大統領とアメリカのバラク・オバマ大統領の会談が、第70回国連総会の場で行われた。会談で双方が提起した難しい問題は、解決されなかった。ロシアとアメリカが対「イスラム国(IS)」戦の協力で合意できない主な理由とは何であろうか。ロシアNOWが概説する。
  1. アサド大統領の今後

 これが主な不一致の理由である。アメリカにとっては、シリアのバシャール・アサド大統領の退陣が、対IS戦よりも重要な問題であるかのような印象を受ける。あまりにも多くの政治資金とプロパガンダ資源が、対ハーフィズ・アサド元大統領(バシャール・アサド氏の父)、次に対アサド大統領の争いに使われた。自国の要求をやめることは、間違いを認め、弱さを見せることを意味する。そのためアメリカは、非宗教的反対派を重視し、「暴君」との烙印を公式に押したアサド大統領との協力を拒んでいるのである。アメリカがこだわっているのは、アサド大統領の退陣、次にシリアの反政府勢力と残った軍の統合、そして対IS戦の継続である。

 ロシアが強調しているのは、アサド大統領のみがシリアの合法的な最高指導者であり、その代わりは現在おらず、ISと本格的に戦っているのはシリア軍であるという点。同時に、アサド大統領を理想化しておらず、シリアには海外からの内政干渉のない政治改革が必要だということをほのめかしている。最初にISを掃討し、次にシリア政府と反政府派の交渉を実施する、という実際的な取り組みを、ロシアは支持している。

 

  1. シリア情勢での国連の役割

ロシアにはアメリカが創設した反ジハード連合に加わる用意があるものの、最初に連合は国連の委任を受ける必要があると、ロシアは主張している。これは明確な「戦法」を描くため、また欧米が一般市民を保護するという名目で、事実上ムアンマル・カダフィ大佐を倒してしまったリビアのシナリオを回避するために必要である。連合の目的および対IS戦の資金が定められた国連安保理決議をロシアは必要としている。

 

  1. 中東の国々の役割

 イランを対IS戦およびシリア情勢の解決に参加させることに、ロシアは賛成している。だが、中東の支配闘争でイランを敵手としているサウジアラビアおよびカタールを筆頭とした、アメリカのペルシア湾の君主・同盟国は、これに反対している。シリア情勢は多くの点で、このイラン・サウジ対決の流れである。イランはアサド大統領を支援しており、ジハーディストはペルシア湾の国から資金援助を受けている。

 イランの核開発計画について7月に合意がなされたことにより、欧米の世論ではイランが国際社会の”のけ者”から有効な交渉相手に変わっていくだろう。あとは、中東の君主国がイランとの妥協点を模索したがるか、にかかっている。

 今のところ、中東には、2つの競いあう反ジハード連合が事実上ある。一方にはアメリカの翼下にある勢力とサウジアラビア、もう一方にはロシア、イラク、イラン、そしてアサド政権が入っている。

 

  1. 米露首脳の国内的な事情

 アメリカでは大統領選が始まった。民主党に対する批判の一つに、優柔不断な外交政策がある。オバマ大統領にとって重要なのは、断固たる姿勢と一貫性を示すこと。特にロシアに対してである。アメリカのマスメディアは、ロシアを新たな「悪の帝国」と位置づけている。

 プーチン大統領にとって、対IS戦での勝利は、ロシアに大国の地位を戻す決断力のある最高指導者が国を率いているのだと、国民に再び示すチャンスを与える。

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