Photoshot/Vostock Photo撮影
6ヶ国とイランはオーストリアの首都ウィーンで、イランの大幅な核開発の制限を確認でき次第、対イラン経済制裁を解除することで合意した。欧米はイランの核開発の目的を核兵器の入手だと考えていた。ウラジーミル・プーチン大統領は「世界は今日、大きな安堵のため息をついた」と述べ、最終合意を歓迎した。
ロシア外務省は、「ロシアが常に支持してきた政治・外交的解決が勝利した」とし、合意によって核不拡散体制が強化されることへの期待を表明した。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、合意内容の履行に積極的に関与していくと述べた。イランの低濃縮ウランはロシアへ運搬され、代わりに天然ウランがイランに供給される。ロシアはまた、イランのフォルド濃縮施設の転換に関与する。
6ヶ国とイランの基本合意の多くは、4月になされていた。この時、遠心分離機および低濃縮ウランの備蓄の大幅な削減、一連の核施設の転換、国際原子力機関(IAEA)側の管理の厳密化にイランは合意していた。
ロシアの報道によると、協議参加国は今回、2010年に発動されたイランへの武器輸出禁止制裁措置および制裁解除のメカニズムについてなかなか合意できず、結局、武器輸出禁止制裁措置は今後5年間有効となり、合意内容の履行の監視のために欧州連合(EU)のフェデリカ・モゲリーニ外交安全保障上級代表が指揮を執る特別委員会が創設されることとなった。
イランが合意に違反した場合、2ヶ月以内に制裁が復活する。
今回合意されたものの、その行方は必ずしもバラ色というわけではなく、履行へのロシアの関与に疑問符が打たれる可能性もあると、ロシアの専門家は指摘する。
ロシア政治研究センターの評議会会員で専門家のドミトリー・エフスタフィエフ氏は、ロシアNOWの取材に対し、合意の履行は「五分五分」だと話した。イランは譲歩したが、それが国内で受け入れられるのはそれほど簡単ではないという。
モスクワ・カーネギー・センター「不拡散問題」プログラムのピョートル・トプィチカノフ氏は、「欧米にも、イランにも、影響力のある本合意の反対者がいる」と話し、多くがその反対者のふるまいによって変わってくるとの見解を述べた。
ラブロフ外相によると、今回の合意によってロシアとイランの経済関係は強まるという。「ロシアとイランには、非常に大規模な原子力エネルギー計画がある」とラブロフ外相。
現代イラン研究センターのラジャブ・サファロフ理事は、ロシアNOWの取材に対し、制裁解除によって、エネルギー以外にも、イランの化学産業、情報技術、鉄道建設、その他の経済分野の市場で、ロシア企業にチャンスが生まれると話した。両国の軍事・技術協力にも大きな展望がある。それを証明しているものの一つが、イランへの地対空ミサイル・システム「S-300」の輸出のロシア側による承認である。ロシアの報道によると、軍事・技術協力分野における潜在的な契約額は、200~700億ドル(約2兆4000億~8兆4000億円)と試算されている。
エフスタフィエフ氏は、「イランはロシアを重要なパートナーとして必要としている」と話す。「イランはまず、経済的パートナーとしてロシアを見ている。イランのイデオロギー的基礎は、(政治的パートナーとしては)ロシアにとってかなりエキゾチック」。純粋な貿易関係以外にも、イランは重要な物流拠点なのだという。ロシアが80%管理する輸送回廊「北-南」は重要である。このルートで、インドおよび南アジア諸国から、イラン、ロシアを経由して、北欧や西欧に貨物が輸送される可能性もある。「多ベクトルの対外政策および対外経済政策の構築の面で、イランはロシアにとって非常に重要」とエフスタフィエフ氏。
対イラン経済制裁の解除によって、ロシアにはどのような経済的影響があるのか。ロシアのマスメディアでは、イラン産石油が市場に流入すると、ロシアの主要な輸出品である石油の価格が下落する可能性があると議論されている。しかしながら専門家は、必ずしもそうではないと話す。
「実際的に見れば、イランは石油市場でそれなりに力のある国だから、確かにロシアにとっては不利。半年後、イランはさらに強力になる。市場に1日100万バレルないしは150万バレルをもたらすことになる」とサファロフ理事。
しかし、ロシアにとって悪影響となる可能性があるのは短期的見通しでのみだという。石油生産は石油輸出国機構(OPEC)によって大きくコントロールされており、対イラン経済制裁発動後にサウジアラビアに移っていたOPECの割り当てをイランが取り戻せば、サウジアラビアは減産を余儀なくされるというのがその理由だ。
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