露外相と米国務長官が対ISで一致

ロイター通信撮影

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中東におけるテロ対策が、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とアメリカのジョン・ケリー国務長官のウィーンでの会談の主要なテーマとなった。2人は「具体的な意見」交換を行いながら、対「イスラム国(IS)」で協力していくことが必要との見解で一致した。ただし専門家は、両国にその用意はないが、と留保を挟んでいる。

 イランの核開発問題の解決を目指す国連安保理常任理事国(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国)、ドイツ、イランの協議が行われたオーストリア・ウィーンで30日、ラブロフ外相とケリー国務長官が会談した。今年4度目となる両者の会談で中心となったテーマは、中東におけるIS対策。

 この会談はロシアとアメリカの首脳の要請に応じて実施されたもの。ラブロフ外相が先に述べていた通り、その目的はISの過激派への対抗において、両国および中東諸国がいかに効果的に団結できるかについての意見交換であった。ラブロフ外相はまた、ウィーンでロシア側は修辞的な物言いではなく、具体的な協議を行い、実践的な協調活動に話を進める意向であることも伝えていた。会談前のロシア側の提案の一つには、中東地域内外の国の連合の創設があった。

 

簡単に団結できない

 2時間以上におよぶ会談で、「具体的な意見」交換が実際に行われたと、ラブロフ外相は会談後に説明した。ケリー国務長官も「中東の状況は、より積極的な行動を要する」と述べた。事前の予想通り、両者は「ISが絶対悪だと考える当事者すべて」の連携の道筋について話し合い、情勢に乗じようとするテロリスト集団の活動を抑制することで合意した。

 とはいえ、どこまでの「具体的な」行動について合意できたのかはわかっていない。ロシア科学アカデミー東洋学研究所のヴィタリー・ナウムキン所長によると、アメリカとロシアの首脳がこの問題について会談するよう指示したことは、すでに「一歩前進」だという。「これはウクライナ問題にはない、相互理解、共通の利益があることを意味する」とナウムキン所長。

 ただし、両国の想定通りにはなかなか進まなそうだ。ナウムキン所長はシリアのワリード・ムアレム外相がモスクワで最近行った声明を引用しながら、第一に、アメリカがシリア政府との協力に消極的であること、第二に、他の国には政治対話への用意があまりないことが団結の障害になる、と説明した。ムアレム外相はウィーン会議の前日、訪問先のモスクワでプーチン大統領、ラブロフ外相と相次いで会談し、「アメリカは政治的解決を求めているが、同時に、テロリストの支援に数十億ドルを配分している」と述べていた。シリアの政権交代を要求しているトルコ政府とシリア政府の対立は、中東での連合結成の可能性に疑問を投げかける。

 

失われたチャンス

 近い将来、対ISで具体的な行動が起こされるのか、という質問に、専門家は断定的な答えを出せない。連携のプロセスは長引くかもしれないし、そうでないかもしれないと、ナウムキン所長は考える。ISは突然攻撃をしかけてくるため、「それが連携を後押しするかもしれない」という。

 ロシアNOWが取材を行った他の専門家は、連合設立はないと考える。連合はある――アメリカとその“衛星国”の連合だ――だが、これは機能していないと、政治学者で、独立系政治情報センターの所長を務めるアレクセイ・ムヒン氏は言う。「むしろ専門家は、この米国が率いる連合の活動が様々な地域でのISの拡大を招いたことに注目している」とムヒン氏。

 「高等経済学院」世界経済学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学部長は、ロシアが経済制裁のもとにある間は、いかなる連合への参加もないだろうと考える。ISはアメリカの対中東政策が生みだしたものだが、すでにアメリカだけではISを撲滅できないという。「アメリカ政府が2001年に宣言したテロに対する戦いは、完全な失敗実績となっている。あの時代は地下活動に対する戦いだったが、現在はすでにテロ国家との戦いに発展している。アメリカにはイラク占領の失敗という結果が待っていた。さらに、シリアの反政権派を『良い』テロリストと『悪い』テロリストにわけた。これらすべてがアメリカの純粋なミスであり、今や(中略)アメリカは自分たちだけではどうにもならない問題を抱えながら、侮辱され経済制裁を科されているロシアをアメリカの名誉のために動かそうとしている」とスズダリツェフ副学部長は考えている。ロシアはこのような状況のもと、またIS側からの脅威が増している状況のもとでさえも、「アメリカのミスの修正のために自国の人的資源と物的資源を使おうとはしない」とスズダリツェフ副学部長。

 

せめて勧誘を防ぐ? 

 空爆とピンポイント攻撃などの以前からのアメリカの対策も、機能しないことが判明したという。「機能したであろう機会はすでに逃されている」とムヒン所長は話しながら、これは「愚かなこと」だと言い、ISが宣戦布告する可能性も指摘した。砂漠への空爆はナンセンス、とスズダリツェフ副学部長は同意する。

 「(ラブロフ外相とケリー国務長官)の会談は、さまざまな国で行われているISの勧誘を防ぐために団結するという話だったのではないか」とムヒン所長。これ以外にも、ISに対する経済封鎖が必要だという。「ISから石油を購入する国が存在する間、ISが何らかの方法で武器を入手できている間は、残念ながら、ISの拡大の試みを弱めることは不可能。おそらく、ケリー国務長官とラブロフ外相は、この話をしたのだろう」とムヒン所長。

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