「ロシアとの戦略的パートナーシップの放棄を」

EPA撮影

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欧州議会は、ロシアを戦略的パートナーとみなすのをやめるよう呼びかけ、ロシアに関する厳しい決議を採択した。ロシアの専門家らは、ウクライナ危機を背景に昨年承認された対露制裁が延長されるものとみられるEUサミットと、今回の決議採択を関連づけている。

 ロシアとEUの関係に関する決議は、6月10日、欧州議会で採択された。賛成は494、反対は135、棄権は69で、決議に賛成しなかったのは、右翼政党であるイギリス独立党およびフランスの国民戦線の代表ならびに一部の左翼組織のメンバーたちであった。

 決議では、「クリミアの不法な併合」に再三言及されており、民主主義的原則、基本的価値観、国際法に違反しているとしてロシアが非難されている。「LGBTの人々に対する迫害や暴力」から「民間機の安全を脅かす」ロシアの軍用機の飛行に至るまでのロシアの内政や外交の数々の政策が、槍玉に挙がっている。すべてこれらを背景に、議員らは、ロシアとの戦略的パートナーシップを放棄し、議員らが侵略的とみなすロシアの政策に反対するプランを、いわゆる「ソフトパワー」の構想の枠内で立案するよう、EUに呼びかけている。

 

「勧告的な性格」

 ロシアの専門家らは、欧州議会で採択された決議の重みをさまざまに評価している。欧州法分野の専門家である国立高等経済学院・欧州国際総合研究センターのキリル・エンチン氏は、「外交分野において、欧州議会には、事実上、全権はない」とし、「欧州議会の決議は、勧告的な性格を帯びており、(EUの)機関には、それに反応する義務は決してない」と述べている。同氏は、ロシアに関する最近のスキャンダルの原因となった、ロシアが導入した欧州政治家の「ブラックリスト」を巡る状況へのEUの反応、および、対露制裁が延長されるものとみられるEUサミットと、今回の決議の採択を関連づけている。

 政治学者で国立高等経済学院の教授であるアンドレイ・スズダリツェフ氏も、6月25~26日のEUサミットと欧州議会の措置を関連づけている。同氏は、それは、EUサイドからロシアへ圧力をかけるキャンペーンの一環であると考えており、欧州議会が5月5日にすでに対露制裁の強化を呼びかけた点を指摘している。

 スズダリツェフ氏は、採択された決議に拘束力はないものの、EUは、それでもやはり議員らの勧告に耳を傾け、いずれはロシアとの戦略的パートナーシップの路線を放棄する、と考えている。一方、キリル・エンチン氏は、そうしたことは起こらないとし、ロシアとEUの戦略的パートナーシップの構想は、かなり抽象的なものであり、「『戦略的パートナーシップ』という概念は、具体的には何も意味しておらず、ロシアとEUの関係は、いずれにせよ、今後も特別な性格を帯びる」と述べている。

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 両氏は、EUの今後の措置は制裁の強化へ向かう、との考えでは一致している。これについては、EUの国家間ばかりでなく政治勢力間の結束をも示した決議の採択という事実も、間接的に物語っている。エンチン氏は、決議が圧倒的多数で採択され大政党によって支持されたことは、ロシアに対する右派と左派の勢力の姿勢が一致していることを物語っているとし、「ロシアに同調したのは、EU内で大した政治的な重みを有していない極左あるいは極右の勢力のみであった」と結論づけている。

 

「ダブルスタンダード」

 決議は、欧州の政党に対する政策の点でもロシアを非難しており、決議文では、ロシアは「EU加盟国の急進主義的および過激主義的な政党を支持し財政的に支援している」と述べられている。

 これに関連して、議員らは、欧州委員会に対し、ロシアによる欧州の政党その他の組織への財政的、政治的もしくは技術的な支援に関する「情報の収集、監視、交換」のメカニズムを創出するよう勧告している。

 スズダリツェフ氏の考えによれば、同じ議員が、ロシアの内政への外国の干渉の可能性を制限する「外国エージェント」法を導入したロシアをさかんに非難している以上、それは、明らかなダブルスタンダードである。監視メカニズムの創出のほか、議員らは、「EU内外におけるロシアのプロパガンダ」を阻止しロシア国内の市民社会を支援するプロジェクトへの資金供与を活発化させるようEUに働きかけている。

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