プーチン首相とメドベージェフ大統領=ロイター撮影
下院選挙運動の開幕に合わせてロシア指導部がおこなった一連の声明は、ここ数ヶ月間、無風状態にあったロシアの政界を揺るがした。メドベージェフ大統領がプーチン首相を大統領候補とする提案をおこなった「統一ロシア」党大会、クドリン財務相の退任、連邦テレビ各局に対して大統領と首相がおこなったインタビュー、これらすべては、世界の代表的マスメディアの注目を集めた。「双頭」による最近の決定の背後に一体何があり、今後数年間のロシアの政治システムにどんな変化が待ち受けているのかと、政治学者らはその推測を続けている。
プーチン首相の大統領候補への推薦が発表された直後に、首相とメドベージェフ大統領の間でのこうした合意は、すでに4年前の前回の大統領選挙前夜に生まれたのではないかという憶測が流れた。プーチン首相自身も、連邦テレビ3局とのインタビューで、これを確認した。しかし多くの専門家はそれを疑問視している。
メドベージェフ大統領が管理している現代発展研究所理事長のユルゲンス氏は、こうした合意が2007年に行われたことはまずあり得ないと考える。ユルゲンス氏は「コメルサント」紙のインタビューで、政権「双頭」は諸事情により、新たな役割分担で合意しなければならなかったのだと述べ、メドベージェフ大統領自身、まだごく最近に、2期目の大統領任期に進む用意があることをほのめかしていた。
メドベージェフ大統領自身が、不定期のテレビ・インタビューで「双頭」交代の基本的な理由を説明した。現在、プーチン首相は「ロシアのもっとも権威ある政治家であり、プーチン氏のほうが格上だ」と認めたのだ。
政治技術センター社長のブーニン氏が強調するところでは、ロシアの未来をプーチン氏が管轄しているのは誰の目にも明らかで、メドベージェフ大統領が2期目に進むかどうかは、結局はプーチン氏次第だった。「プーチン氏には、自分がなぜ再び大統領になりたいのか、多くの動機があった。だがその主要動機の一つは、自分が作りあげたシステムは政治的安定によってのみ保たれるという確信だった。そして明らかにプーチン首相は、メドベージェフ大統領が、現代化と政治改革によって、そのシステムを維持できるかどうか、確信がもてなかったのだ」と政治学者は見なしている。
大統領へのプーチン氏の3度目の登場は、世界の政治エリートたちの相反する反響を呼びおこした。西側の多くのマスコミでは、ロシアで再び、ブレジネフ時代のソ連の特徴だった「停滞」と不振の時代が始まるかもしれないとの危惧が語られた。しかしプーチン氏自身が連邦テレビ各局とのインタビューで、「ソ連の戦後の指導者の誰一人として、自分やメドベージェフ大統領のように集中的に活動した者はいない」のだから、そうした比較は場違いだと確約した。
「インタビューのあとは、ロシア政界に新しいプーチン氏が戻ってくるのは明らかだ。それは、現代化と積極的変化を支持し、社会との相互関係において新たな連結作りに向けた新アプローチを支持するプーチン氏だ」とオルロフ政治学者は、ノーボスチ通信に語った。
プーチン首相が「イズベスチヤ」紙に寄稿した論文も、激しい議論を呼んだ。この論文の中でプーチン首相は、ロシアとベラルーシとカザフスタンの関税同盟をベースとしたユーラシア統一経済圏創設構想を打ち出した。この提唱も、それはソ連復活の試みのことではないかと考えた分析家らを危惧させた。しかしプーチン首相は、論文発表のすぐあとで、旧ソ連圏での統合プロセスへの帝国的野心がロシアにあることを否定した。
CIS(独立国家共同体)研究所副所長のジャリヒン氏の見解によれば、ユーラシア連合創設構想は、世界で形成されつつある地理経済学的状況に最大限に合致するものだ。旧ソ連諸国は、全世界のグローバリゼーションは現実に、大きな経済クラスター(集積)形成の道を進んでいる。ジャリヒン氏はさらに、この提唱はすでにプーチン氏の大統領プランの重要な一部分など指摘する。「プーチン氏は、今後数年間のロシアの外交戦略の大枠策定を開始した」と、この政治学者は強調した。
ロシア各紙では、すでに「双頭」それぞれのかなり明確な姿が浮き彫りになってきた。ロシア語マスメディアのインターネット図書館 Public.Ru の研究によれば、メドベージェフ大統領がしばしば「民主主義者」、「リベラル派」、「愛国者」の名で呼ばれるのにたいして、プーチン首相は、「経験ある政治家」、「保守主義者」、「大国主義者」と呼ばれることが多い。しかし多くの専門家は、ウラジーミル・プーチン氏が権力の座に就いたときは、「双頭」概念は非現実的になるだろうと考えている。基本的権力の全権は、再びプーチン大統領の手に集中するのだから。
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