オバマ大統領のワシントンポスト紙へのTPPに関する寄稿文は、予期せぬあからさまな扇動の一例である。TPP協定を早期に批准するようアメリカ議会を説得することが、現在のオバマ大統領の主要な課題であることはわかる。それならば、まずはアメリカ人にとってどんなメリットがTPP協定にあるのかを話さなくてはいけない。
また、自身の名誉のためにも、TPP協定がアジア太平洋地域諸国にとってどれだけプラスなのか、地域全体にどれだけの利益をもたらすのかにも触れておくべきだっただろう。オバマ大統領にとって、アジア太平洋地域は、アメリカの対等なパートナーではなく、アメリカの可能性を開く有望な近隣の実験場であり、それ以上でもそれ以下でもない。国際舞台ではTPP参加国すべてが恩恵を受けると言っているが、寄稿文にそのような文言はない。
中国は、ここで言及された唯一の外国である。
攻撃的な反中レトリックは悪い意味で驚かせる。アメリカは政治だけでなく、経済においてさえも、国内を結束させ、重要な決定を行うための唯一の有効策が、特定の敵の指定なのかと思わせる。国内の作業レベルでの話ならまだしも、大統領の口からのこのような発言は正式な外交戦略のように響き、中国に対してあからさまに挑戦状を突きつけているようだ。ちなみに中国はいまでも、TPPに対して冷静かつ外交的に反応している。
このようにして、TPPを「共通の経済的幸福の名のもと」の協定から、「反中」協定に変えることは、対外的な魅力を著しく損ねる。寄稿文からは、アメリカが公には示していない別のポイントも見えてくる。それはTPPが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に対置するということだ。RCEPは東南アジア諸国連合加盟国+6ヶ国の連携で、中国が積極的な役割を果たしている。
寄稿文がアメリカ議会の批准を鼓舞したとしても、対外関係においてアメリカには負の影響になりかねない。寄稿文の一部は他の国のTPP反対派に、アメリカの利益推進の証拠として利用される可能性もあるのだから。そうなれば、他の国でTPPの人気が高まらなくなる。
TPP協定が発効するには、アメリカ国内の批准以外に、他の国の批准も必要になる。その双方の重みがTPPの全参加国のGDP85%を超えるように。寄稿文はアジアのTPPの懐疑論者を引き込むものとはならないだろう。
*記事全文(露語)
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