主な貿易相手は欧州かアジアか

画像提供:アレクセイ・ヨルスチ

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ロシアはその地理的条件にもかかわらず、自国をずっと西洋文明のフロンティアと見なしてきた。そのため、主な貿易関係は欧米のパートナーと構築されていた。だが、昨年発動された対ロシア経済制裁は、東洋への方向転換を考えさせるきっかけとなり、中国の習近平主席は最重要国賓と言っても過言ではないほどの存在になった。また、ロシアの外交政策の目標の一つは、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の枠組みを含めた、アジア地域および新興・発展途上国との連携になった。

 ロシアと西側諸国の政治的関係の冷え込みは、経済的関係の地理分布の変化だけでなく、言葉の改革をももたらした。ロシアの高官は昨年まで、欧州連合(EU)を単体と考えながら、最大の貿易相手と呼んでいた。中国はこの時、貿易量でロシアの第2位の相手であった。しかしながら、昨年の対ロシア制裁により、公式統計から単体貿易相手としてのEUが姿を消し、加盟国が個別の扱いになった。その結果、ロシアの貿易相手の公式統計で、中国が何度も第1位に輝くこととなった。

 とはいえ、従来のパートナーへのロシアの依存がなくなったわけではない。 6月初めに発表された今年1~4月のロシアの貿易に占めるEUの割合は45.7%で、昨年の49.5%より減少しているものの、依然として高い。アメリカとの貿易も計算に入れると、ロシアの貿易活動の約半分は対西側諸国である。ちなみにアジア太平洋諸国との貿易は着実に拡大しているものの、割合は27.9%である。

ロシアの貿易に占める割合

EU - 45.7%

アジア太平諸国 - 27.9%

 同じ時期の他の国との貿易データを見れば、政治方針があってもなお、ロシアと従来のパートナーとの相互関係は変わっていないということがわかる。今年1~4月のデータからもう一つ言えることは、国別でみると、ドイツ、オランダとともに、中国がロシアの貿易において存在感を増しているということである。貿易額は中国で206億ドル(約2兆4720億円、年率ドル換算で29.4%減)、ドイツで154億ドル(約1兆8480億円、35.2%減)、オランダで150億ドル(約1兆8000億円、37.7%減)。ちなみに日本は82億ドル(約9600億円、20.6%減)、アメリカで71億ドル(約8520億円、20.2%減)、韓国で60億ドル(約7200億円、27.9%減)、フランスで38億ドル(約4560億円、43.2%減)。

 ドイツ、オランダのロシア経済における重要な役割とはわかりやすい。ロシアの輸出の半分強を占める石油・天然ガスが主に、これらの国々を通じて供給されているのだ。特に、石油はオランダの港経由で供給されており、ガスはヨーロッパ向けガスパイプライン「ノルド・ストリーム」でバルト海底を経由してドイツへと供給されている。

 習主席が先月にモスクワを訪問した際、ロシアと中国の企業はいくつもの大型契約を結んだ。中国向けの天然ガスの輸出拡大や、中国銀行によるロシア企業への人民元での融資などが取り決められた。

 依然としてEUはロシア産ガスの最大の買い手であり、EUとアメリカの経済制裁の対象になったロシアの国営銀行は、EUの子会社を通じてEUとアメリカの銀行のシンジケートローンを利用しようと努力している。だが、従来のパートナーとの関係は徐々に縮小。特に、今年第1四半期、ロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」は初めて、ヨーロッパ向けのガス供給でノルウェーの会社に1位の座をゆずった。

対露貿易額、億ドル(2015年1月~4月)

対露貿易額、億ドル(2015年1月~4月)

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