画像提供:アレクセイ・ヨルスチ
中国の国家主席の信頼が厚い側近の一人である栗戦書中国共産党中央弁公庁主任の三月半ばのロシア訪問には、さほど関心が払われなかった。従来の中国の外交からすると、それは、異例の訪問であり、中国の国家元首の事務局の長官に外交ミッションが委ねられることは、これまでけっしてなかった。
これらの訪問は、両国間の「包括的な戦略的パートナーシップ」の強化を裏づけるものである。しかし、露中同盟といったものの形成について語るのは、時期尚早である。
「多極的世界を目指す闘い」および米国の圧力への対抗は、ロシアと中国にとって異なる地理的次元を具えている。つまり、ロシアは、アジア太平洋地域の周縁に位置しているにすぎず、米国のアジアへの回帰の問題は、ロシアにとっては中国にとってほどの切実さを有していない。一方、中国は、ウクライナ危機の早期解決にロシアほどの関心を抱いていない。
ロシアと中国は、地域紛争において互いを支持することにかなり消極的であり、「中国は、ウクライナの領土保全および対話によってクリミア問題を解決するとの呼びかけを尊重している」との李克強首相の声明は、「ロシアは、中日の領土問題においてはどちらの側にも与しない」とのニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記の発言を、まさに鏡のように映している。
中央アジアにおける中国の政策は、中国による中央アジア諸国向けの巨額で特恵的で政治とは無関係の融資の提供が、ロシアの金融リソースに取って代わるものとなり、それらの国々にとっては駆け引きの自由度を高め、ロシアにとっては政治的な取り引きの価格を高める、という意味で、ユーラシア経済連合(EEU)のプロジェクトに対する新たな挑戦を生みだす。ロシアと中国では、上海協力機構(SCO)の今後の発展の道に対する見方も異なり、ロシアは、それを政治的な舞台と捉え、中国は、それを多面的な発展のツールと捉えている。
また、ロシアと中国の経済関係における貿易の不均衡の固定化は、ロシア経済の多角化という目的の実現を阻んでおり、両国の議論の対象となることは避けられない。投資協力のレベルも、十分とはいえない。
さらに、アメリカとの関係においてさえ、中国とロシアは、立場を異にしている。露米関係が最低の水準に達しており、その改善の傾向も見られないのに対し、中国は、米国との協調を重んじ、中米対話と中露対話が互いに影響し合うのを避けようとしている。
逆説的ながら、このように述べたからといって、露中の戦略的パートナーシップが底を突いてしまったわけではない。西側諸国による対露制裁の導入は、ロシアによって行われている「東方シフト」の触媒となったが、このシフトをロシアにとって何よりも象徴しているのは、中国である。
このシフトの動きは、強いインパクトを与えており、中国とロシアは、十年以上にわたる交渉の末にロシア産ガスの供給の条件に関する合意を達成し、中国へ供給される最新兵器の量を増やし、投資協力促進のために共同の金融機構を創設し、経済協力を拡大しつづけている。中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)へ加盟するとのロシアの決定も、「東方シフト」に関する決定が目先の状況に左右される形ではまったくなく行われていることを示している。
露中関係の存在するすべての問題およびそれらによって生じるリスクは、双方が「ポジティヴな面」にばかり集中して納得のいかない問題の協議を先送りしてきたことに起因している、と思われる。協力の新たな展開は、国益が多くの点で一致するものの常に一致しているとは限らない二つの対等な大国の立場から露中対話を再起動させ、互いに生じる問題を協議し、協力のポテンシャルおよび客観的に存在している制限を弁えることを、可能ならしめている。
*ミハイル・マモーノフ、分析機関「外交」発展責任者、政治学博士
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