大公妃エリザヴェータ

最も美しい妃の悲劇
エリーザベト(ロシア語ではエリザヴェータ)は、ヘッセン大公ルートヴィヒ4世とアリス王妃との間に次女として生まれたドイツの 王妃で、イギリスのヴィクトリア女王の孫にあたる。生涯を通して、彼女は悩める人々の救済に献身した。ロシア革命中に殉教死したため、エリザヴェー タは聖人の列に加えられた。彼女はヨーロッパで最も美しい王妃と称された。
幼少期よりエリザヴェータは信心深く、母と共に慈善活動に参加した。孤独に過ごしたこのドイツ人大公女は、結婚に向いていないようであった。
エリーザベトの求婚者全員が拒否された。だが、それは彼女がロシア皇帝アレクサンドル2世の息子、セルゲイ・アレクサンドロヴィ チ・ロマノフに出会うまでのことだった。20歳のエリーザベトは、この大公と婚約し、後に妻となった。/ エリザヴェータ・フョードロヴナとセルゲイ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフ。
エリザヴェータは、ロシア語やロシアの伝統を学ぶことにたいへんな努力を費やした。ほどなく、彼女はその両方をマスターした。/ ヘッセン大公ルートヴィヒ4世と娘のエラ(エリーザベト)(右)とアリックス(左)。1881
セルゲイ・アレクサンドロヴィチはきわめて信仰心が深い人物だった。彼女の夫が示した規範はエリザヴェータに多大な影響を与え た。その結果、ダルムシュタットの父親と家族の反対にもかかわらず、彼女はロシア正教に改宗することを決意した。
モスクワ総督の妻として(セルゲイ大公は、このポストに1891年に任命された)、エリザヴェータはエリザヴェータ慈善協会を 1892年に設立した。/ 冬の宮殿での仮装舞踏会のためにロシア民族衣装に身を包むエリザヴェータ・フョードロヴナとセルゲイ・アレクサンドロヴィチ。
この協会の活動は、すぐにモスクワ地方全体に広がった。エリザヴェータ慈善教会の委員会はモスクワの教会区すべての代表によって構成された。それに加えて、エリザヴェータは赤十字女性委員会のリーダーも務めた。
日露戦争の勃発後、エリザヴェータ・フョードロヴナは兵隊支援のための特別委員会を設立し、これによりクレムリン大宮殿内に寄付センターが設置された。ここで包帯が保管され、服が縫われ、資材が集められ、巡回型の移動教会が建てられた。
この国では少しずつテロ攻撃、デモ抗議やストライキが広がりつつあり、革命が間近だった。セルゲイ・アレクサンドロヴィチ大公は、革命運動家に対して断固たる措置がとられるべきだと考えたが、辞表を提出した。
それにもかかわらず、社会主義革命闘争委員会は、セルゲイ・アレクサンドロヴィチ大公に死刑の判決を下した。1905年2月18日、大公はテロリストのイヴァン・カリャーエフが投げた爆弾によって暗殺された。/ 夫の死後、喪に服すエリザヴェータ・フョードロヴナ。
夫の大公の死後、エリザヴェータは貴重品を売却し(ロマノフ王朝の一部を成すものは同家の宝物庫に返却した)、その収益で4軒の家と広大な庭園がついたボリシャヤ・オルディンカ通りの邸宅を購入し、1909年にマルフォ・マリインスキー女子修道院を設立した。
この女子修道院に居を移したエリザヴェータ・フョードロヴナは、禁欲と修行の生活を送った。夜間は重病患者を介護し、日中は旧約聖書の詩篇を読んだ。毎日のように修道女たちと共にモスクワ各地の貧困街を訪ねて慈善活動に従事した。/ マルフォ・マリインスキー女子修道院の修道女の服に身を包むエリザヴェータ・フョードロヴナ。
彼女は当時最も犯罪が蔓延していたヒトロフカ市場を訪れ、そこにいる子どもたちの救援活動を行った。
エリザヴェータは、ボリシェビキが権力を掌握した後も、ロシアから亡命することを拒否した。1918年の春、彼女は拘束され、 モスクワからペルミに送還された。1918年5月、彼女はロマノフ一家のその他の皇族と共にエカテリンブルクに連行された。/ ヴェーラ・グラズノーワ。「大致命女エリザヴェータ・フョードロヴナ」。学位論文より。1997年
2ヶ月後、彼らはアラパイェフスクに連行された。1918年7月5日の夜、エリザヴェータ・フョードロヴナ大公妃はボリシェビ キによって殺害された。彼女を含むロマノフ家の皇族は、アラパイェフスクから18キロ離れたノヴァヤ・セリムスカヤ鉱山に連行された時のことだった。
1992年、ロシア正教はエリザヴェータ大公妃を聖人の列に加えた。/ フリードリッヒ・アウグスト・フォン・カウルバッハによるエリザヴェータ・フョードロヴナ大公妃の肖像画。
世界中の20世紀のキリスト教殉教者10人が、ロンドンのウェストミンスター寺院の西側の大扉の上部にあるファサードに、塑像として表現されている。左から4番目がロシア大公妃の聖エリザヴェータである。/ エリザヴェータ・フョードロヴナ大公妃。塑像。ウェストミンスター寺院、ロンドン。

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