プーチン大統領の好きな娯楽は何?

Reuters
 国家元首というポストは、あらゆることにおいて公開性が前提となる。映画館、展覧会、劇場――そのどれも、政治と同じような「仕事」になりがちだ。あるイベントでは、何らかの問題を解決し、他は、立場上行かざるを得ない。だが、そういうイベント、行事のなかにも、プーチン大統領が単にお義理で訪れるのではない、心から好きなものもある。

劇場ファン       

ウラジーミル・プーチン大統領とブラジルのミシェル・テメル大統領、ボリショイ劇場

 プーチン大統領は、娯楽的なテレビショーに「ヘッドライナー」として出演するのは、どうもあまり好まず、政権の座にある18年間、一度も出たことがない。私人としての大統領は、劇場を訪れることが多い。彼が「公衆の面前に姿を現さなければならない」ような場合は、選択肢はたいてい劇場となっている。

 プーチン大統領は、ロシアの世界的に有名な劇場に、海外からの賓客をしばしば連れて行く。2000年には、マリインスキー劇場でのセルゲイ・プロコフィエフのオペラ「戦争と平和」のプレミアに、トニー・ブレア首相夫妻を招いた。2016年にボリショイ劇場とイスラエル・オペラとの合同コンサートが行われた際には、ベンヤミン・ネタニヤフ首相を招待。 

 このときボリショイ劇場は、様々な演目とともにアントン・チェーホフの作品も上演したのだが、プーチン大統領は、これを最後まで見た。彼は、外国ではさほど知られていない劇場にも――「ソヴレメンニク」、「Et Cetera」、「モスクワ芸術座」などにも――チェーホフの戯曲を見に行っている。

 プーチン大統領が二度見ようとした作品もあったが、状況が許さなかった。例えば、アレクサンドル・グリボエードフの古典的名作『智恵の悲しみ』は、プーチン大統領はまず「ソヴレメンニク」で見て、それから「マールイ劇場」へも行こうと予定していた。ところが、桟敷席は空席のままとなった。その日の夕方、2016年12月19日に、アンカラでアンドレイ・カルロフ・ロシア大使が殺害される事件が起きたからだ。

 それでもプーチン大統領は、4ヵ月後に「マールイ劇場」を訪れたが、そのときはもう別の演目で、アレクサンドル・オストロフスキーの『最後の被害者』であった。

 2018年5月の「ロシアにおける日本年」オープニングの公式セレモニーに、プーチン大統領が安倍首相とボリショイ劇場を訪れる可能性もあるだろう。

 

どんな音楽が好み?

 「私はいつも、ヨーロッパとロシアのポピュラーなクラシック音楽を喜んで聴いてきたし、今もそうだ。バッハ、ベートーヴェン、モーツァルトはもちろん...。ロシアではラフマニノフ...。リスト編曲のシュベルトなど」。プーチン大統領はかつてこう言った。これが彼の「公式」の趣味だが、ジャーナリストたちが書いているところによれば、非公式の趣味もある。
 「ソベセードニク(話し相手)」紙によれば、実は、大統領がいちばん好きなのはシャンソンや、バンド「リュベ」(ロシア・ロック)、グリゴリー・レプス、彼が若い頃(60年代~70年代初め)のソ連の映画曲やディスコ、それにジプシー音楽だという。

 例えば、アンサンブル「ジプシー・ドヴォール」は、プーチン大統領の前で何度も演奏しているし、ジョージ・W・ブッシュが訪露した際には、彼も招かれている。「ジプシー・ドヴォール」のサイトには、様々なファンのなかに、「国家元首」たちとロシア大統領の名も見える。

 とはいえ、プーチン大統領は実際クラシック音楽も好きなようで、政権寄りの新聞「コムソモリスカヤ・プラウダ」は、彼のお気に入りの歌手として、オペラのスター、アンナ・ネトレプコを挙げている。

 

どんな展覧会を見たか

プーチン大統領が「ワレンチン・セローフ生誕150年展」を訪問している。

 展覧会や博物館となると、もっと稀だが、それでもその年の主なアート・ブロックバスターは見逃さない。2017年2月には、トレチャコフ美術館で、ヴァチカン展「ローマ・アエテルナ(永遠のローマ):ヴァチカン所蔵傑作展」、および「ビザンチン傑作展」を見ている。

 このときは、ヴァチカンの秘宝をどうしても見たいという希望者が多く、わずか2時間で3万チケットが売り切れた。傑作のいくつかは門外不出で、2015年のプーチン大統領とローマ法王フランシスコとの会談のおかげで、ロシアにやって来たのだった。

 しかし、もう一つの大イベント、2016年1月の「ワレンチン・セローフ生誕150年展」のほうは、プーチン大統領は、その開催には関わっていなかったが、それでも足を運んでいる。

 大統領の訪問の後、厳しい寒さにもかかわらず、行列待ちは夜遅くになっても終わらなかった。ある市民が美術館の入り口のドアを外してしまったため、美術館当局は犠牲者を避けるためにチケットの販売を打ち切らねばならなかった。

 

映画とレストラン

ウラジーミル・プーチン首相(当時)とリュドミラ・プーチナ夫人、ジャック・シラク元フランス大統領のベルナデット夫人、ドミートリー・メドベージェフ大統領とスヴェトラーナ・メドベージェワ夫人

 「正直なところ、映画館にはめったに行かないが、良い映画は好きだ」とプーチンは言っている。実際、大統領が映画館に行くのは稀だ。劇場での映画鑑賞は主に、ロシアの愛国的大ヒット作を、大統領のためにプライベート上映するケース。

 最近は、ソ連の宇宙ステーションの救出劇「サリュート7号」を鑑賞している。ちなみに、この映画の半分は、無重力状態で撮影されており、これは映画史上初めてとなる。

 しかし、ことレストランに関しては、プーチン大統領はほぼすべてのロシアの都市にお気に入りがある。もっとも、そのほとんどは、やはりモスクワとサンクトペテルブルクだが。

「北の首都」では、例えば、ロシア料理レストラン「ニュー・アイランド」。ここは、ドイツのゲアハルト・シュレーダー元首相と訪れたことがある。「スターラヤ・タモージニャ(旧税関の意味)」は、ジャック・シラク元フランス大統領のベルナデット夫人も気に入った。

モスクワでは、ルブリョーヴォ・ウスペンスコエ通りの「ツァールスカヤ・オホータ(ツァーリの狩り)」。ここは基本的に政界のエリートに人気の場所でもある。また、ウクライナ料理の「シノーク」も。

 ドイツ料理とビールを出す「ピヴヌーシカ」,も、ひいきの一つで、ここのサイトは客寄せに大統領の写真を載せている。

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