ルポ・「日露ビジネス対話」分科会

 16日朝7時半、東京都千代田区。ホテルニューオータニのメイン入口ロビーに、スーツ姿のロシア人と日本人が集まり始めた。前日からの日露首脳会談にともなって開かれる経済イベント「日露ビジネス対話」の受け付けスタートだ。先週末時点で日露合計800人を超える参加申し込みがあった。この日は朝から昼過ぎまでを3つの時間帯に分け、計8つの分科会が開かれる。
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 =ロシアNOW

都市整備とエネルギー

 ロビーの奥に進むと数百人収容の中規模ホールが3つ並んでおり、参加者は分科会のテーマに沿って各ホールに吸い込まれていく。朝8時半、どこも席が7割ほど埋まったところで分科会が始まった。

 筆者は最初に「都市整備」をテーマにする会に参加した。よくある主催者側の長い挨拶など抜きにして、モデレーターの進行の下、すぐにプレゼンテーションが始まった。日建設計は駅など交通機関施設を中心とした街づくりの考え方、積水化学工業は独自の下水管整備工法などを説明した上で、モスクワなどでのそれぞれの実績を披露した。野村総合研究所が報告したのは、交差点の交通量に応じて信号の長さを調節し、車の流れをスムーズにする技術。これもモスクワで実験を進めているという。ロシア側からは都市開発の企業や行政関係者から報告があり、鉄道・地下鉄駅を中心とした都市開発計画などについて説明された。日露両サイドとも、会場の大型スクリーンにCG、アニメーションが数多く映し出され、数年前に比べるとビジュアル面でも洗練された印象を受けた。

 休憩に入ってホールを出ると、ロビーは大混雑で、日露双方が入り乱れてあちこちで名刺交換をしたり談笑したりしている。テレビ局のマイクを向けられた人がカメラの前で話しているのも、1組や2組ではない。

 10時を過ぎ、参加者がさらに増えたところで次の分科会。今度はエネルギー分野の会に着席した。ここでのトップバッターは、サハリンプロジェクトに長く関わってきた三井物産だった。藤原弘達執行役員がロシア事業の経緯を説明すると同時に、「ロシアの資源は日本の将来にも重要。短期的な状況に惑わされることなく取り組んでいく」と結んだ。千代田化工、駒井ハルテック、川崎重工業といったやはりロシアでの実績を豊富に持つ企業のプレゼンが続いた。ロシア側からは資源開発を売りとするサハ共和国、サハリン州、ウリヤノフスク州の地方政府幹部が登壇し、資源開発計画や、再生可能エネルギー開発への展望を語った。

=ロシアNOW=ロシアNOW

 

中小企業、医療その他

 1時間半近い時間があっという間に過ぎ、最後は中小企業をテーマとする会に参加した。壇上にはモデレーターを含む7人が並んでいる。日本側は貿易振興機構(ジェトロ)のほか北海道総合商事、エムズプランニング、青井商店の地方企業3社。ロシア側は中小企業育成公社、戦略イニシアチヴ・エージェンシー、極東投資誘致・輸出支援エージェンシーの3団体だ。

 日本の地方企業はそれぞれ具体的な事例を披露。北海道総合商事は北海道銀行グループの地域商社で、数々の道内企業をロシア市場に導いている。ロシア極東での道産食品販売や温室栽培施設設置、居酒屋の開業など、進出サポートの実績を概説した。モスクワ方面に日用雑貨や美容商品を輸出するエムズは、ロシア民謡を通した文化交流を機にビジネスに発展した経緯を語った。

 面白かったのは、寒冷地仕様の作業用手袋や長靴をサハリン経由で輸出する青井商店に対し、モデレーターでもあるA.ブラヴェルマン中小企業育成公社社長が「ムルマンスクのような地域でも可能性があるのでは」「ロシア鉄道やガスプロムなどの大企業の調達に入っていくことも検討すべき」などとその場で提案したこと。ロシア側の熱意を感じさせた。

 分科会はこのほか「極東」「人的交流」「先端技術」などさまざまなテーマに分かれていた。「医療」の分科会に参加したロシア企業の代表者は「新しいプロジェクトの話が聞けて参考になった。参加して良かったと思う」と満足そうだった。

 

日露ビジネスの裾野の広がりを実感

 すべての会が終わり、用意されていたランチブッフェで昼食を取りながら他の参加者と話した。その中で、環日本海経済研究所(ERINA)の新井洋史調査研究部長がこんなことを言った。「ロシア関係の会合には長年参加してきたが、今回は、ロシアでこんなことをやっているという日本企業の実例紹介が多かったのが印象的だった」。構想・計画だけでなかなか先に進まなかったのは過去の話で、近年ではロシアで実績を重ねる日本企業が相次いでいるということ。「日露ビジネスの裾野が広がってきていると実感した。これがさらに広がって欲しい」(新井氏)。

 ランチブッフェでもあちらこちらで名刺交換が行われ、長時間話し込む人たちも多く見られた。もう食事は終わっている様子でも、参加者は、なかなか帰ろうとしなかった。

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