ケルチ海峡を結ぶ仮橋の建設=
セルゲイ・ボービレフ撮影/タス通信クリミア編入後、本土-クリミア間の橋の建設は、喫緊の課題となった。橋がなければ、飛行機または船でしか行き来できないためだ。この困難で高額な建設計画(2283億ルーブル≒3800億円)の妥当性は、不況のさなか、ロシア社会の論争を引き起こし、国内の他の橋の問題にまで波及している。
ロシアは世界一面積が広く、水資源も豊富である。それぞれの土地間の連絡を確保することは、経済発展と関連しながら、ロシア政府の課題となり続けてきた。
現政府もむろん、この課題を認識している。「完全な交通の連結性、ロシア全土の統一を確保する必要がある」と、ウラジーミル・プーチン大統領は2012年12月に年次教書演説で述べている。
「経済高等学院」交通経済・交通政策学研究所の報告では、さまざまな国の道路網の構造が比較されている。カナダ、中国、ドイツ、アメリカの道路網はきめ細かく、州間、省間といった地方の交通連絡が整備されている。ロシアの道路網はモスクワを中心とした放射線状で、モスクワを囲む環状道路の渋滞を引き起こしている。
道路インフラで最も重要な要素は橋だ。ロシアでは、道路よりも、橋の問題の方が大きい。
モスクワ川にかかるジヴォピスニー橋(「絵画的」)=マクシム・ブリノーフ撮影/ロシア通信
「ロシア連邦国家統計局」の2014年末のデータによると、ロシアには7万2500本の橋(道路と鉄道)がある。280万本の川が流れている国で、これは多いだろうか、少ないだろうか。アメリカでは、例えば、25万本の川が流れ、60万本の橋がかかっている。
橋の不足については、超過走行距離の指標、すなわち、A地点からB地点までの陸上で移動した距離と航空機で移動した距離の差でも判断できる。例えば、モスクワの70~80%に対し、欧米の大都市は20~25%だと、専門家センター「プロボク・ネット」のアンドレイ・ムホルチコフ副センター長は話す。ロシアには50%以下の街がないと、交通経済・交通政策学研究所のミハイル・ブリンキン所長は説明する。例えば、北部アルハンゲリスク州の行政中心地から州きっての観光名所ソロヴェツキー諸島(ソロヴェツキー村)までは、自動車で行くとカレリア共和国経由で約1200キロになるが、飛行直線距離(「ヤンデックス」サービスのデータ)は240キロである。
ロシアで橋の建設を推進するのは、道路の建設よりも困難だ。2000年から2014年までの間に、国家統計局によると、新しい橋が200本しか建設されていない。理由は明白だ。非常に高額なのである。1キロの一車線道路を地上に敷設するのにかかる費用は平均1億170万ルーブル(約1億6950万円)だが、橋になると平均5億7900万ルーブル(約9億6500万円)である。
ロシアの道路への歳出は、GDP比で、他の国と比べるとかなり少ない。道路網がすでに発達している国の比率は3%以上だが、ロシアでは2%以下である。インフラ資産の価値も、GDP比で、多いとは言えない。日本は179%、中国は76%、ロシアは61%。
ロシアの条件も、建設コストを引き上げている。天候、距離、地方の発達の遅れ、道路網の都市化(道路は人口集積地を通過するため、土地の買収が高額になる)など。
アレクセイ・クデンコ撮影/ロシア通信
とはいえ、困難な条件はあるものの、橋の建設はロシアでは一大ビジネスだ。約500社が関与している。イベントに関連する大げさで高額なプロジェクトがしばしば建設に選定されることが、問題である。例えば、2014年ソチ五輪では、48本の道路と鉄道の橋が建設された。総額は2854億ルーブル(約4758億円)。2012年APEC首脳会議に向けて建設された、ウラジオストク市とルースキー島の東ボスポラス海峡にかかるケーブル橋は、322億ルーブル(約537億円)かかっている。
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