石炭価格はここ5年で、4分の1まで落ち込んだ。アメリカのエネルギー系通信社「プラッツ」によると、2011年、1トンあたりの原料炭の価格は300ドル(約3万3000円)まで上昇していたが、2016年2月にかけて73~74ドル(約8030~8140円)まで下落した。燃料炭(火力発電所で使用)の価格も、1トンあたり142ドル(約1万5620円)から53ドル(約5830円)と、3分の1まで下がっている。
石炭相場に下落圧力をかけているのは原油価格。原油1バレルあたり35~40ドル(約3850~4400円)で、石炭の需要と価格は昨年比で下降し続けるのではないかと、ロシア科学アカデミー・エネルギー研究所の専門家らは考える。
「石炭市場の状況は現在でもかなり難しく、全般的には、これは世界経済が減速した結果だ」と、オランダ系資産運用会社「スヒルデルショフェン・ファイナンス」分析部のウラジーミル・マリノフスキー部長は話す。特に、鉄鋼業の減産は、石炭の需要の減少につながり、その結果、価格にマイナスの影響をおよぼした。
ロシアの石炭業界の関係者は、この新たな脅威の部分的な解決策に、生産多様化を見ている。具体的には、石炭化学など。これは石炭の深加工で、アンモニア、コークス、タール、プラスチック、コールタールピッチの生産を可能にする。
国内の石炭採掘の半分以上を占める、シベリア南西部のクズネツク炭田では昨年、ロシア初の石炭・石炭化学研究所が創設された。ここを拠点として、高効率かつ安全な固体燃料採掘・加工技術が開発される。
石炭をめぐる状況は良くないものの、ロシアの輸出量は増えている。ロシア連邦エネルギー省のデータによると、2015年の石炭生産量は2014年比4%増の3億7300万トンであった。
石炭企業は増産を予定している。例えば、石炭市場の大手「ロシア炭・クズバス」は、今年の生産量を9%、120万トン分増やし、今後2年で200万トン増やそうとしている。販売拡大は、輸出の割合を現在の10%から30%まで引きあげて、実現させようとしている。
ロシアでは、天然ガスの方を好みながら、石炭をあまり使わなくなってきていると、専門家は説明する。「石炭の国内需要が低迷する中、石炭輸出の拡大がロシアの石炭産業成長の長年の原動力となってきた」と、ロシア科学アカデミー・エネルギー研究所実験室リュドミラ・プラキトキナ室長は話す。
ロシアは現在、石炭を世界50ヶ国に輸出しており、世界市場におけるロシア炭の販売は少なくとも昨年まで増えていた。エネルギー省のデータによると、2011年から2014年までの期間に輸出量は1億600万トンから1億5200万トンまでと、ほぼ1.5倍に増えた。このように、採掘量の約40%を海外に販売することになった。「ロシアの石炭生産会社にとって、ルーブル安が強力なサポート要因になった。これによって採掘コストが下がり、海外の生産会社と比べると、競争力を維持できている」とマリノフスキー部長。
ロシア科学アカデミー・エネルギー研究所の予測によると、2030年までに世界の石炭生産会社にとってより魅力的な市場となるのは、インドとASEAN諸国。石炭の消費量が大幅に増加する可能性があるという。
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