ロシアは2014年8月、現代史上初めての経済制裁を発動した。ウクライナ問題へのロシアの姿勢を原因として、同時に複数の国がロシアに対して経済制裁を発動したことから、その対抗措置として、このような決定がなされた。
対ロシア経済制裁では、ウラジーミル・プーチン大統領の親しい友人と考えられている何人もの実業家、政治家、公人が、EUおよびアメリカへの入国を禁じられ、さらにEUおよびアメリカにあるこれらの対象者の資産が凍結された。
ロシア政府は対抗措置として、EUおよびアメリカからの食料品の輸入を禁止した。禁止になるまで、ロシアの食品小売売上高に占める輸入食料品の割合は40%であったため、禁輸措置は国内の農業の成長につながった。
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ロシア政府は後に、同様の措置を、他の国に対しても実行した。特に、トルコ空軍が2015年11月末、ロシアの軍用機Su-24を撃墜した後、ロシア政府は、トルコからの魚、ナッツ、乳製品を除いたほぼすべての食料品の輸入を禁止した。
次にロシアの制裁対象になり得るのはウクライナである。ウクライナがEUとの連合協定の経済部分に署名した場合、ロシア政府はウクライナからロシアへの食料品の輸入を2016年1月1日より禁じる可能性がある。
専門家によると、ロシアでは近年、貿易黒字が見られるようになってきているため、政府が輸入を制限しているのだという。ロシアの輸出量は輸入量をはるかに超えている。
その際、ロシアからの輸出品として、石油とガスが大きな割合を占めている。例えば、2015年度のロシアとトルコの貿易額は230~250億ドル(約2兆7600億~3兆円)水準になると試算されており、うち大半の約200億ドル(約2兆4000億円)はロシアからの輸出で、約40~50億ドル(約4800~6000億円)はトルコからの輸入になる。
「ロシアからの制裁は輸入のみ。これが短期間でロシアの国際収支・貿易を改善するため」と、「フィナム」の金融アナリスト、ティムール・ニグマトゥッリン氏は話す。貿易収支はGDPに直接的な影響を与える。
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食料品の禁輸措置の結果として、農業の生産量が上がったが、同時に食料品が値上がりした。ロシアの輸出入品を調査する正式機関であるロシア連邦税関庁のデータによると、ロシアへの動物由来製品の輸入は2014年、42%減となった。具体的には乳製品33%減、肉と肉の副産物32%減。
ロシア連邦国家統計局のデータによると、ロシアの食品価格は2014年、16.7%値上がりした。このような状況において、最高検察庁は主要な小売チェーンの食品価格上昇の理由を調べ、一部チェーンの市場操作を指摘。モスクワだけでも418件の行政事件が立件された。これを受けて、社会的に重要な商品20点につき、価格凍結が発表された。
ロシア政府は幾度となく、EUの食品サプライヤーが制裁をかいくぐっていると非難している。ロシア連邦税関庁のデータによると、2015年上半期、税関庁の下部組織と他の機関はあわせて552トンの制裁食料品を差し押さえた。当局は店から制裁商品44.8トンを押収した。また、当局は2015年8月6日、国境で押収した禁輸措置に該当する品を廃棄することを決定した。
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ロシア側の見解では、国連を回避して発動されたあらゆる一方的な制裁は、法に反する。2014年4月、アメリカによる貿易義務不履行に関するコミュニケをWTOに送付した。
ロシアの役人の見解では、アメリカの対ロシア制裁は、アメリカで活動するあるいはアメリカの企業と取引を行うロシアの業者の権利を侵害する。これはWTOの基本協定の一つすなわちサービスの貿易に関する一般協定に矛盾する。しかしながら、ロシア政府は2015年3月、WTOの枠組みの中で紛争解決手続きを始めるのを断念したと発表。WTOの制裁異議手続き自体が不透明で、あまりにも多くの要求がありすぎると指摘した。具体的には、ニカラグアが以前、アメリカの経済制裁がWTOの規則に反していることを証明したものの、いかなる帰結ももたらさなかった。
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