FASは2015年2月、ヤンデックスの届け出にもとづいて、グーグルに対する審理を開始した。グーグルはアンドロイド対応機器の市場での支配的地位を悪用していると、ヤンデックスは訴えていた。
アンドロイドはグーグルの無料のモバイルOSで、市場のシェアは85%。グーグルは昨年12月、アンドロイド対応機器メーカーとの業務条件を大幅に変更。検索システムを含む、競合他社のアプリをモバイルにプリインストールすることを、メーカーに禁じた。違反した場合、グーグル・マップ、ユーチューブ、ジーメールなどの極めて人気の高いサービス、またアンドロイドのあらゆるユーザーにとって主要なアプリ源であるグーグル・プレイストアを、違反機器で使えなくすると警告していた。
その結果、以前はヤンデックスと提携していた「プレスティジオ」、「フライ」、「エクスプレイ」などのスマートフォン・メーカーが、提携を終了させなくてはいけなくなった。
ヤンデックスにとって、ロシアは主要な市場。だが市場でのシェアは縮小を続け、代わりにグーグルが成長してきている。この傾向が続いた場合、2~3年後にはグーグルが市場のトップになる。ロシアの統計サービス「ライヴインターネット・ル」によると、2015年9月のロシア市場におけるシェアはヤンデックス57.4%、グーグル34.9%。
そのため、自社のアプリと検索システムを機器にプリインストールし続けることが、非常に重要になってくる。ヤンデックスと提携していたプレスティジオ、フライ、エクスプレイは、ロシア市場でかなりのシェアを有している。
ヤンデックスの勝訴によって、市場ではかつてのルールが復活する。自社アプリのプリインストールを目指すすべての会社が、スマートフォンやタブレットのメーカーと直接交渉し、有利な条件を提示することになる。また、グーグルはアンドロイド対応機器のユーザーに、プリインストールされているアプリを非アクティブ化し、ブラウザのグーグル・クロームのデフォルト検索エンジンを変えることが可能であることを通知し、競合他社の検索ウィジェットやサービスの設定を提案しなければならない。
ロシア市場では、グーグルにとってヤンデックス以外の競合は事実上存在しない。ロシアの調査会社「スパルク・インテルファクス」のデータによると、グーグルのロシア法人の昨年の収益は180億ルーブル(約345億円)。グーグルの世界における純利益は440億ドル(5兆2800億円)で、ロシアはその約0.5%を占めているにすぎない。この損失がグーグルにとって痛手となることはないだろう。
とはいえ、FASの決定は、国際社会にとって興味深い前例になっており、将来的には他の会社の提訴の起点になるかもしれない。欧州連合(EU)はかなり前から、グーグルの独禁法違反の証拠収集を行っているため、ヤンデックスのケースは前例になる。グーグルの有罪が証明された場合、欧州委員会は売上高の10%の罰金を科す権利を持つこととなり、罰金が記録的な60億ドル(約7200億円)に達する可能性もある。
*アントン・クロフマリュク
「eレギオン」社マーケティング責任者、インターネット専門家
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。