全ロシア世論調査センターの調査によると、ロシア人の43%がワインは体に悪い飲み物だと考え、25%が国内でこの分野は発展しないと考えている=オレグ・セルデチニコフ撮影
ロシア・ワイン・ガイドブック
ワイン専門家でソムリエのアルトゥール・サルキシャン氏は、ロシア・ワイン・ガイドブックを作成した(印刷版と電子版で、言語はロシア語と英語)。サルキシャン氏はあくまでも個人的な選定としたうえで、最初に醸造所、次に店頭のボトルと、どのワインでも必ず2回の試飲を行っていると説明している。
2014年版にはドン川流域の醸造所14ヶ所と、クバン川流域の醸造所5ヶ所の製品が入っている。その特徴はブドウの自生種を使用しているところ。「ヴェデルニコフ」醸造所のワイン「クラスノストプ・ゾロトフスキー」など、他では飲めない貴重なワインが存在する。
ガイドブックにのっている数十種類のワインは、あらゆる優雅なテーブルに似合う。「ファナゴリヤ」醸造所のワイン「サペラヴィ」は肉料理、「アブラウデュルソ」の「リスリング」は魚料理、「ツィムリャンスキエ・ヴィナ」の「ツィムリャンスキー・グランド・レゼルヴ」は野生の小動物料理と合う。「ラエフスコエ」の「ルネッサンス」はチーズの味を引き立て、「シャトー・ル・グラン・ヴォストク」の「ファゴチン」はデザート、「レフカディア」の「リグリヤ・レゼルヴ」はオイスターに合う。
帝政時代に遡る伝統
これらのワインのほとんどが「地理的名称ワイン」に分類されているが、これはヨーロッパの地理的表示保護(IGP)に該当し、法的に分類が確定される。原産名称保護(AOC)に該当する「原産地名称保護ワイン」のカテゴリーは、現在作成中。
ガイドブックには、主にロシア南部に位置する小さな醸造所の紹介もある。ロシアの総ワイン生産量の0.05%弱と極めて少量だが、ワインの専門家らは高く評価している。
このような醸造所のおかげで、ロシア南部は国際的なワイン・ツアーの拠点に変わるかもしれない。ガイドブックに醸造所の物語が記載されているのもおもしろい。「ファナゴリヤ」はかつて存在したファナゴリヤの街の遺跡近くに位置している。「ツィムリャンスキエ・ヴィナ」については、アレクサンドル・プーシキンが自身の作品の中で触れている。「アブラウデュルソ」はニコライ2世のお気に入りだった。
3~5年後には市場に大変化?
ロシアぶどう栽培家・ワイン生産者組合のデータによると、国内の店頭に並ぶ国産ワインと外国産ワインの割合は7:3だが、国産ワインの半数はただ国内で瓶詰めされているだけだという。国産ブドウが使用されているのは30%ほど。だがサルキシャン氏はこう予測する。「3~5年後にはロシア産ワインのブームが訪れる。この時までに2~3年前に植えたブドウの収穫が行われる」
ロシア産ワインが国内市場でシェアを拡大しないうちは、外国市場への参入は難しい。現在製品を輸出しているのは、比較的大手の醸造所の一部にすぎず、それもマーケティング目的の小ロットだ。「アブラウデュルソ」は例えば、シャンペンと発砲ワインを約15万本輸出しているが、これは自社の国内販売量の1%弱。同社の輸出先は、イギリス、ハンガリー、フィンランド、デンマーク、イスラエル、旧ソ連諸国。「ツィムリャンスキエ・ヴィナ」はリトアニア、カザフスタン、ポーランド、ウクライナなどの東側諸国に、約12万本を輸出している。「ファナゴリヤ」は少量を日本とアメリカに輸出している。
「アブラウデュルソ」取締役会のパーヴェル・チトフ議長はこう話す。「ロシア産ワインを世界で認識されるようなブランドにしたい。ロシア産ワインの質は将来、欧米のワインの質と競争可能になるのではないか」
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