東京の渋滞対策に学ぶ

ロシアの代表団は、東京で開催された、道路交通についての国際会議に参加した=Kabacchi / flickr.com

ロシアの代表団は、東京で開催された、道路交通についての国際会議に参加した=Kabacchi / flickr.com

ロシアの代表団は、東京で開催された、道路交通についての国際会議に参加した。東京の最先端の道路交通対策を背景に、モスクワの構想はかすんで見えた。東京の道路の総延長だけでもモスクワの実に7倍。会議を通して、日本の渋滞対策の現状を取材した。

ITS世界会議が東京で開催 

 「第20回高度道路交通システム(ITS)世界会議」が10月14~18日に東京で行われ、世界中から交通運輸業者や科学者などが結集した。ロシアの道路交通関係者やモスクワ市役所の関係者を含む官僚も多数参加。会議では交通計画の問題について集中的に話し合いが行われた。

 ロシアの役人は、緊要な問題だらけのロシアの現状と比較して、日本の研究者の関心がはるかに先を行っていると話した。セミナーでは例えば、歩行者の行動パターンの分類の仕方、電気自動車の充電での革新的取り組み、冬季のITSによる交通管理、渋滞の発見基準などについて話し合いが行われた。

 ロシアでいまだにもっとも大きな問題となって いるのは、道路網の極端な不足。イーゴリ・レヴィチン元運輸省の評価では、約100万キロメートル不足しているという。

 

賢い信号機などの交通最適化 

 東京は最新技術、自動車および公共交通機関の優れた交通運営で、世界の道路交通関係者の注目を浴びた。東京の交通管制センターのカメラが自動車道の各区間に、さらに道路状況に応じて信号を調整する「賢い」信号機が全域に設置されている。

 バス網も発達しており、地下鉄の路線と交差しない。中心部の一ヶ月の 駐車料金は非常に高額なため、利用するのはほぼ不可能。交通最適化を行った結果、東京では信号機付近の小さな自動車の停滞でさえ渋滞と考えられるほど。モスクワでは数時間規模もあり得る道路の完全な麻痺は、台風や地震などの自然災害が発生した場合を除き、ほとんど起こらない。

 

面積も人口も車の数もほぼ同じなのに 

 ロシアの道路交通の専門家は、道路の自由な往来の主な要因は道路網の発達だと考える。東京の道路の総延長は2万8000キロメートルで、うち2800キロメートルが有料の高速道路だ。

 面積、人口、密度において、モスクワと東京に大差はないが、ロシアの交通量は年々増加しており、モスクワ郊外から数百万台の自動車が流入している。正式なデータによると、モスクワの今年の人口は約1200万人。東京の現在の人口は約1500万人。人口密度はモスクワで1平方キロメートルあたり4770 人、東京で1平方キロメートルあたり5966人。東京の登録自動車数は550万台。モスクワは約400万台だが、毎年250~300台増加している。

 

カギは大規模な新しい道路の建設 

 有料道路の建設と運営を担当している、ロシアの国営企業「ロシア自動車道(AVTODOR)」が訪日したことも興味深い。セルゲイ・ケリバフ AVTODOR社長は、東京の多層道路網の発達に印象を受け、モスクワにも初の有料高速道路が誕生する可能性があると話した。AVTODORは今年末までに、クトゥーゾフ大通りの6車線二重道路の建設提案を作成する。とはいえ日本の道路網に比べると小規模の11キロメートル。

 モスクワの交通インフラ整備において、新しい道路の建設が優先課題となっていないことは残念だ。9月には、モスクワの行政が、自動車道建設予算を3分の2に減らすことが明らかとなったばかり。

 先進的な取組みによって、東京の渋滞が完全に解消されたわけではないが、とても快適な交通条件が整えられている。住人は公共交通機関を利用して、お手頃 な価格で移動ができる。快適で早い個人の自動車での移動と、さほど快適ではないものの、さらに早い公共交通機関での移動のバランスの哲学が、東京を渋滞から救った。それでも交通問題の決定的な解決策となったのは、大規模な新しい道路の建設だ。

 

元記事(露語)

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