日露の仕事は信頼性vs効率性

ロイター通信
 日本の商社に勤務して5年目に入った。私はロシアで学生時代に今の会社と知り合った。当初はロシアでの製品の営業活動を助けるアルバイトをしていたが、大学卒業後に日本の本社に採用された。

ためになる決まりとそうでない決まり

 日本の会社で一番難しいのは、決まりごとの多さだ。個人的、営業上のコミュニケーションのルール、社内、対顧客のルール。だが日本のオフィス文化で一番多いのは、行間を読む、日本的に言うと「空気を読む」ことが求められる、暗黙のルールと「場」のルール。私は順応期を過ぎたが、当初は驚きばかりだったことを覚えている。使用するペンの色は黒限定。A4の半分ほどしかない請求書の書式は、例えば請求書に合わせ、感覚でハサミで切ったり、千切ったりしてはならず、まずは半分に折って、定規で押さえて切らなければいけない。決まりごとの多さはロシア人の想像をはるかに超えているが、なぜ、誰にとってそれが大切なのかを理解したことで、心の中で抵抗を感じずに順守できるようになった。

 とはいえ、すべての日本の決まりごとが必ずしも有益でないことが残念だ。例えば、「終電まで」事務所にいること、疲れた従業員とすべてにおける過労への高評価。所定労働時間中の生産性の低さと「機嫌取り」のために夜遅くまで事務所にいる努力。これらは完全に根絶されない日本の旧習である。この決まりごとを、私のロシア人の知り合いの誰もが理解できておらず、支持していない。

 

信頼性vs効率性

 大学時代の教授は、日本とロシアの企業文化の主な違いをこう表現する。「信頼性vs効率性!日本では事務所にいることが義務で、時間の節約は追い求められない。従業員が完全に体制に組み込まれていて、確実にその機能を遂行することが重要。一方で、ロシアの従業員は『怠け者』であるため、労苦を最小限にし、効率を高めようとする」

 

職場の人は家族

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日本へ愛をこめて

 私個人にとって、すべての困難を乗り越えさせてくれる、日本の会社で働くことの重要なプラスがある。それは日本の職場の人がもう一つの家族だということ。理想主義的に聞こえるかもしれないが、私が実感しているのはこれであり、いくつか例をあげたい。日本で就職するために、ビザを取得し、日本行きの準備をしていると、本社から電話がかかってきて、生活に何が必要かと聞かれた。私は驚いて、答えにつまってしまった。非営業日の日曜日に空港に到着すると、未来の上司2人が私を出迎えてくれた。すぐに家具屋に案内され、ソファーが選ばれ、入居先に設置され、カーテンがかけられた。テレビは設置済みだった。まるで自分の遠い親戚を出迎えているみたいだ。まだ会ったことはないが、今後の生活でかかわる人だと考え、事前に共通の話題を見つけようと務めている。仕事ではいろいろな状況が発生するのを目の当たりにしたが、日本人は部下、同僚、上司の行動に家族のように反応する。道徳的または金銭的に会社に迷惑をかけてしまった従業員には、必ず二度目のチャンスを与えてくれる。新人に期待されるほどの力がなかった時には、スキルが向上する仕事場を全力で探してくれる。

 

両国の企業文化のバランス

 ロシア人従業員との仕事は日本人にとってどうだろうか。元同僚の男性従業員がこんなふうに話した。「ロシアメンバーを見ると、皆とても優秀だなーって感じ。日本語が出来るだけじゃなくて、他の外国人とは違う勤勉さを持ってるなって思った。でも、これは外国人全員に言えるかもしれないけど、日本人の良くない意味での仕事の真面目さ(有給が取りづらかったり、上下関係が面倒等)や飲み会みたいな文化や習慣に戸惑ってしまったら、日本の企業には合わないかもしれない」

 理論的にも、実践的にも、どちらの国で働く方が良いかなんて断言できない。両国ともに、独自の長所と短所を企業文化に形成してきたのだから。でも、完璧に制限は無い。「怠け者」のロシア人の効率と、日本人の質の高い職務遂行が一緒になれば、どんな企業にも必要なバランスができるに違いない。

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