ソチ14日目「メダルの日」

ミハイル・モルダーソフ撮影

ミハイル・モルダーソフ撮影

毎朝ある簡単な疑問が真っ先に浮かんでくる。今日はメダルの日か否かって。

メダル争いのない日はすべてがゆったり 

 メダル争いのない日、うちの施設はあまりピリピリしてない。シフト交替がそれほど厳しくないから、バスに急いで乗りこんだりしないし、山脈からたち込めてくる霧を見る余裕すらある。シフトに遅れたら大変だけど、メダルの日じゃない日はゆっくりと動くことが許される。こんな日はボランティアは走って担当の場所に向かうなんてことがない。仕事が少ないから、空いた時間に食事できるし、2時間かけて五輪ゾーン入りした後で、座って紅茶を飲むこともできる。

 自分の担当施設に世界の報道機関の目が向いていない時、すべてがとても友好的でオープンになる。仲間や関係者と話をしたり、時には選手とも話をしたりするけど、雰囲気は重くない。重圧がなくて、誰もが普通に担当をこなしている。ジャーナリストや五輪報道関係者が、飴の包み紙をカサカサと言わせながら、うっかり選手にどう?なん  てすすめて、選手から苦笑いされて拒まれてることもある。そんな私たちにとって、最新ニュースがもっぱらの話題。「コヴァリチュクがケガしたって話聞いた?」「そんなのウソにきまってる!」「うちのボランティア村に誰か金メダリストが来るらしい!」「いいなあ!」「明日やっとうちにコーニスがつくらしい」「ウソでしょ!」

 

一転緊張が走る「メダルの日」 

 メダルの日になると、こんな余裕はなくなる。保安検査を終えた直後から、緊張感がただよってくる。すぐにひっぱられて、外国人への進入禁止の説明を頼ま れたりする。そんな対応をしながらシフト交替しようと急いでいると、今度は写真家が撮影場所について聞いてきたりする。競技前の果てしなく続く集合や概要 説明、スタートリストの音、緊張、混乱、あわただしさ…それでも意識のどこかで、今五輪のメダルの運命が決まるってことを理解してる。一緒に活動して 情がわいた選手たちの重要な瞬間、世界中が注目するその瞬間が訪れるってことを。これは五輪という看板の下にある巨大なメカニズムの中で自分がこなしてい る、直接的な課題や担当の大まかな話でしかない。

 メダルの日は一瞬たりとも力を抜いたり、自分のことを考えたりする余裕がない。イベントは渦を巻き、その渦に自分は引き込まれて、底にたどりつくまで動きつづける。バス停で55分後に来る次のバスを待つ朝4時半まで。

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