ソチで活躍した選手の1年

アリョーナ・ザヴァルジナ&ヴィック・ワイルド

米露夫婦の二人三脚

　シベリア娘のアリョーナ・ザヴァルジナとアメリカ男児のヴィック・ワイルドは、スノーボード・パラレル大回転・回転の選手。五輪開催中、猫も杓子もこの二人について書きたてて、超有名人になった。

　ともにロシア代表としてソチ・オリンピックに出場し、メダルを獲得した。愛のシュプールを描きながら表彰台にあがった2人は、大きな注目を浴び、その恋愛物語は連日報道合戦を繰り広げた。

　オリンピック後は第82回「ル・マン24時間レース」にVIPとして招待されたり、時計メーカー「ラケタ」の広告キャンペーンに登場したりしている。2人はまた、新しいロシア・スノーボード連盟の共同設立者にもなった。組織は以前、アルペンスキー連盟の一部であった。競技の面では“穏やかな”1年であった。1月の世界選手権では、ともに準々決勝を突破することができなかった。

ユリヤ・リプニツカヤ

アイドルにかかるプレッシャー

ウラジーミル・ペスニャ撮影／ロシア通信

　ユリヤ・リプニツカヤはフィギュアスケート女子シングルの選手。

　ソチ・オリンピック団体戦で金メダルを獲得し、一躍アイドルになったが、五輪での目くるめく成功の後、悪夢が待っていた。16歳の少女は、その後はなかなかファンの期待にこたえることができず、スランプに陥っている。

　彼女のファンは新たな成功を待ち望んでいたが、失望が続いた。新しいフリー・プログラムで「ロミオとジュリエット」のジュリエットになったリプニツカヤ。しかし、その印象は、ISUグランプリシリーズでの大きなミスで帳消しとなった。シリーズ第3戦中国杯ではキスアンドクライで大粒の涙を流し、表彰式を欠席するという前代未聞の騒動も起こした。精神的重圧のほどがうかがえる。ソチ・オリンピック後、リプニツカヤには有名税とも言えるスキャンダルがつきまとっている。チームのパートナーたちとの不仲説、コーチを替えたがっているとの噂など。

　緊張続きのポストオリンピックシーズン。1月のロシア選手権では9位に終わり、欧州選手権への出場も逃してしまった。失敗続きのリプニツカヤは2014/2015シーズン終了前に自身のシーズンを切り上げて終えてしまった。

安賢洙（アン・ヒョン・ス、ロシア名はヴィクトル・アン）

今後もロシアで

マクシム・ボゴドヴィド撮影／ロシア通信

　韓国出身の安賢洙はショートトラック男子の選手。

　ロシアの国籍を取得してソチ・オリンピックにのぞんだが、五輪後も彼の生活は基本的に変わっていない。ソチ・オリンピックでメダル獲得数最多となった安（金メダル3個、銅メダル1個）は、ロシアにすでに4年暮らしている。ロシア語も覚え、ロシアの寒さとモスクワの果てしなく続く渋滞にも慣れた。役人もマスメディアも注目している存在で引っ張りダコだが、数多いインタビューをこなしつつ、本人はいたって謙虚だ。

　今後の人生計画はすべてロシアと関連していると、本人は話す。オリンピック後にロシア政府から贈られた家で夫人と暮らす。現在の主な目標は、3月にモスクワで行われる世界選手権への出場。ロシアのファンは安を見るために大会に行くし、本人もがっかりさせないようにがんばろうと考えている。

ロマン・ペトゥシュコフ

パラリンピックの超英雄

コンスタンチン・チャラバノフ撮影／ロシア通信

　ロマン・ペトゥシュコフはクロスカントリー男子座位およびバイアスロン男子座位の選手。

　ロンドン・パラリンピックが観戦の面白さという点で突破口だったとすれば、ソチ・パラリンピックはこの傾向を確固たるものにしたと言える。超人たちの戦いは見ごたえがあり、ロシアには超英雄があらわれた。ペトゥシュコフは、ほとんど奇跡を成し遂げ、ソチで6個の金メダルを獲得した。

　交通事故にあって入院し、2006年トリノ冬季オリンピックを病院のテレビで見ていたペトゥシュコフ。その後の大活躍を誰が予想したであろうか。4年後のバンクーバー・パラリンピックで銀メダル1個、銅メダル1個を獲得し、ソチでは優勝回数で記録を更新した。

　9年前のケガが自分の人生に意味を与えたと本人は話す。現在は学校の授業で子どもたちを教えながら、スポーツを奨励している。そしてこれまでと同様、大会出場へのモチベーションを保ち続けている。1月にはアメリカで行われた世界選手権（ケーブル2015）に参加した。メダルをここで獲得することはできなかった。