ビーフストロガノフ=
=アンナ・ハルゼエワ私は料理教室を始めた時、外国人の生徒向けに、ボルシチ、ピロシキ、サラダ、飲み物というロシア料理のメニューを作成した。その後、自分でもつくったことのない、また多分食べたこともない料理をリクエストされるようになった。それはビーフストロガノフ。私と一緒に仕事をしていた友人にリクエストについて話すと、「それってどんな料理?」と聞かれた。祖母は料理を知っていたが、レシピを知らなかった。
結局、外国人にこの”クラシックなロシア料理”のつくりかたを学ぶことになり、やがて私の料理教室の定番料理となった。私はある時、プロのシェフの素晴らしいレシピを見つけた。ビーフストロガノフの発明の歴史は不明だが、このレシピがオリジナルに近いとはあまり思えない。ビーフストロガノフはロシアの伝統的な料理ではない。貴族のために、この場合はパーヴェル・ストロガノフ伯爵(1774~1817年)のために考案された料理のようである。一説によれば、オデッサでストロガノフ伯爵が服装のTPOなどを守っているあらゆる「然るべき」人向けに用意していた「開放卓」のために考案されたという。ビーフストロガノフは大量につくることができるため、調理、配膳が簡単で、大勢をもてなすのに適していた。別の説によれば、老いたストロガノフ伯爵が簡単に噛むことのできるような料理をシェフが考案したのだという。
ソ連時代、ビーフストロガノフは大衆化し、どの食堂でも提供されるようになった。これは老いたストロガノフ伯爵の歯には厳しかったであろう。祖母はこう話す。「ビーフストロガノフはいつでも食堂にあった。質はバラバラで、肉がパサパサしていて硬い時もあれば、普通の時もあった。私は家でつくったことはないし、つくっている人はあまりいなかったはず。炒めるのに適した肉が必要だったから。そんな肉はなかったから、つくるのは煮る料理やハンバーグばかりだった」
この「ブルジョア」な料理はなぜソ連に残ったのだろう。貴族にルーツのある名前も変えられることはなかった。ロシア語でビーフストロガノフは「Бефстроганов-Befstroganov」と表記され、フランス語の「ベフ(またはブフboeufは牛肉の意)」と貴族の姓はそのままだ。この点で、ソ連人が夢見ることさえできなかった贅沢がこの料理にはある。多くの人は、(プロレタリア的に)”正しい”家柄でない場合、家族の書類を燃やさねばならなかったのだから。
ソ連風ビーフストロガノフは簡単にできる。私が料理教室で教えているレシピとは違い、ピクルスもトマトも入っていないし、ご飯やマッシュポテトではなく、炒めジャガイモと一緒にふるまわれる。また、「南部(Южный-Yuzhny)」ソースも必要だ。これは広く普及していて、わざわざ説明の必要もないソースのようだけれど...私はこの「南部」ソースを知らない。祖母に聞いてみると、「そんなもの知らないわ(笑)(笑)(笑)店で買ってたなんてことはないもの」との答えが返ってきて、疑問は解消されなかった。
私は南部に暮らしているため、ジョージア(グルジア)のトケマリ(プラムソース)なら条件に合うと思った。ジョージアに暮らしたら、トケマリは何にでもついてくる。つくってみたビーフストロガノフはとてもおいしかった。正しい南部ソースを実際に使ったら、どんな味になるのかはまだわからないけれど。あと、私は炒めジャガイモよりも、ご飯と一緒の方が好き。
「大学の食堂で食べて以来だな」と、私の父はモスクワのカフェでビーフストロガノフを注文した後、話した。父は20年以上海外で暮らしているため、当たり前かもしれないけれど。「食堂のビーフストロガノフよりはるかにおいしいよ。お前のオリビエ・サラダはオリジナルのレシピに近そうに見える」
現代ロシア人はソ連と決別し、ロシア革命前の料理をオリジナルのレシピに近づけようとしているように見えるかもしれない。だが、ストロガノフ伯爵があの世で嘆いてしまうほどの食堂ビーフストロガノフも、まだたくさんある。
ソ連料理のレシピ本の記事
1、牛肉を洗い、スジを取り除き、ブツ切りにする。麺棒またはミートハンマーを使って肉を叩き、細切りにする。
2、タマネギをみじん切りにして、バターで炒める。タマネギがあめ色になったら、細切りの牛肉を加え、塩コショウをし、かき混ぜながら5~6分炒める。
3、小麦粉を加えてさらに2~3分炒める。
4、サワークリームを加えて、2~3分煮る。「南部」ソースを加えて、塩で味をととのえる。
炒めておいたジャガイモを添える。ビーフストロガノフとジャガイモに、刻んだディルまたはパセリを加える(お好みで)。
*これは現代ロシア女子アンナ・ハルゼエワのソ連料理に関するブログにあるソ連料理本の一部。詳細はここをクリック。
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