ロシアの囲碁事情

写真提供:ロシア囲碁連盟
 第21回「日本国大使杯囲碁大会」が24~25日、モスクワで開催された。このロシア最大の大会の前日、ロシア囲碁連盟と日本大使館は記者会見で、ロシアにおける囲碁の普及と今後の計画について話した。

 伝統的に囲碁の人気の高い中国、日本、韓国などのアジア諸国と比べると、ロシアは他のヨーロッパ諸国と同様、さほど囲碁の人気の高い国というわけではない。だが近年、ロシアでは着実に人気が高まっている。碁石はロシア人になじみ深いチェス駒の陣地を狭めていくだろうか。

 

ロシアで囲碁が始まった

 囲碁は今から50年前、ソ連時代に登場した。1965年、レニングラード(現サンクトペテルブルク)で、最初の囲碁部が創設され、初めての囲碁大会が実施された。1984年に独立したスポーツ種目と認められ、現在のロシア囲碁連盟の前身である全国組織が創設された。1980年代終わりから1990年代初めにかけて、主要な国際大会でソ連の棋士が初めての優勝を手にする。ソ連崩壊後の1990年代に一旦衰退するが、2000年代に新たな発展を始める。

 ロシアの囲碁ファンをもれなく数えるのは難しい。近年、インターネットにはたくさんの囲碁サービスが登場している。連盟の概算によると、このようなサービスのユーザー数は4万人強。この時、大会に定期的に参加している「まじめな」棋士は、4000人強だという。

写真提供:ロシア囲碁連盟

国の支援の強化

 ロシア連邦スポーツ省は今年4月、2020年までの囲碁発展プログラムを承認。ここには国際大会に出場するロシア代表の育成も含まれている。

 連盟は10月22日、ロシア民族・非五輪スポーツ種目委員会と、協力協定を結んだ。「囲碁が発展し、国内の知的種目の中で適切な地位を得られるよう、我々は共に、国家レベルで囲碁を推進していく」と、ゲンナジー・アリョシン委員長は述べた。

 国の支援の強化は、連盟の積極的な活動の成果であり、また節目となる第60回「ヨーロッパ碁コングレス」の開催国としてロシアが選ばれたことの影響である。この大会は2016年7~8月、サンクトペテルブルクで行われる。

 

ヨーロッパ有数の競合国

 ヨーロッパ囲碁連盟のティン・リ副会長はこう話す。「ヨーロッパ碁コングレスはヨーロッパでもっとも歴史の長い大会というだけでなく(1957年から行われている)、世界でもっとも規模の大きい大会でもある。(ロシア大会には)世界40ヶ国約1000人が参加すると予想している。ロシアが60回目の開催国に選ばれた理由はたくさんある。ロシアの囲碁人口は多く、人気もとても高い。また、ロシアの棋士はヨーロッパの強豪。総合的な囲碁の習得レベルが高く、毎年成長している」

 実際に、ロシアの棋士はヨーロッパ碁コングレスで何度も優勝している。例えば、アレクサンドル・ディネルシュテインは1999年、2002~2005年、2009年、イリヤ・シクシンは2007、2010、2011年に優勝しており、団体ではロシアが12回、ペアでは9回優勝している。

 

碁石はチェス駒の陣地を攻めるか

 ロシア人は伝統的に、知的ゲームとしてチェスを愛してきた。ロシアのチェス史は数百年と長く、ミハイル・ボトヴィンニク、ガルリ・カスパロフ、アナトリー・カルポフなどのソ連およびロシアのチェス選手は、世界的な名声を獲得した。チェスの基本ルールすら知らないロシア人は、ほとんどいないと言える。

 「ロシアで筆頭の知的ゲームにするためには、ゲームに「根系」がなければならない。囲碁学部が開設され(特別なスポーツ大学に)、囲碁を普及させるための教育原則を学んだ人が世間に出ていって、ようやく広まりについて話すことができるようになる。発展する前提条件はあるが、今これについて話すのは時期尚早」とアリョシン委員長。

 囲碁とチェスの違いは何か、ロシア人は東洋のゲームの何に魅了されているのかについて、何度もヨーロッパ囲碁チャンピオンになっているシクシン(25)は、ロシアNOWにこう話す。「チェスはロシア人にとってかなり普通のゲーム。私が所属していたクラブには、大きなポスター『囲碁は調和の芸術』がかかげられていた。この言葉にいつも魅力を感じていた。囲碁は単なるゲームでもないし、単なるスポーツでもない。もっと広い。これは芸術。囲碁には独自の歴史があり、独自の習慣があり、行動の規範がある。そしてこれが、非常に魅了するのだと思う」

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