トレチャコフ美術館のトレグロワ新館長

ゼリフィラ・トレグロワ氏=写真提供:オレグ・グリツァエンコ /cult.mos.ru

ゼリフィラ・トレグロワ氏=写真提供:オレグ・グリツァエンコ /cult.mos.ru

ゼリフィラ・トレグロワ氏は2月、トレチャコフ美術館の新館長に就任した。トレグロワ氏は長い間、クレムリンの博物館で働き、またパリやローマからニューヨークまでのさまざまな国際プロジェクトを監督してきた人物で、モスクワのカルティエ館の企画展、クレムリン博物館の「英国王室の『黄金時代』」展、ルネ・ラリック展、欧米のアヴァンギャルド展、社会主義リアリズム展、現代ロシア芸術展などがその貢献によって開催された。トレチャコフ美術館の問題や今後の計画について、ロシアNOWがトレグロワ新館長に聞いた。

-ご就任おめでとうございます。クレムリンでのお仕事の際には、世界中で芸術プロジェクトを実施されていました。トレチャコフ美術館が参加したプロジェクトもありましたから、この美術館を内部からよくご存じですね。まずは何から着手しますか。

 トレチャコフ美術館とは1988年から仕事をしています。どの博物館、美術館であっても、成功への鍵となるのは、エントランスエリアから展示のデザインや休息の可能性までの、訪問者にとっての快適さです。博物館の活動でもっとも目立つ部分は展示会です。トレチャコフ美術館は今日、世界中から展示物を集めながら、非常に困難なプロジェクトを行っています。私がそのような印象を受けたプロジェクトは、ニコライ・ゲーの展示会、次にケルンのルートヴィヒ美術館から絵画を借りることのできたナタリヤ・ゴンチャロワの回顧展、コスタキのコレクションの展示会です。ただ、どんなに素晴らしい展示物があろうとも、やはり重要となってくるのは展示のデザインです。すっかりガジェットに慣れた訪問者のために、技術を駆使しないわけにはいきません。プロジェクトを精査しながら、展示をより効果的かつ魅力的にするにはどうすべきかを考えて行く予定です。

 

-トレチャコフ美術館分館(クルィムスキー・ヴァール通りの中央芸術家会館内)には案内の問題があります。「黒の正方形」などのアバンギャルドや社会主義リアリズムの傑作を、ロシア人の訪問者も外国人の訪問者もなかなか見つけることができません。

 そのような問題は確かにあります。中央芸術家会館の建物には他の施設もあるため、多くの人が迷子になり、時に入口すら見つけることができません。そのため、モスクワ市の行政と協力して、広い歩行者ゾーンのある文化集積を創設する作業に取り組みます。集積ではトレチャコフ美術館、ムゼオン芸術公園、ゴーリキー公園、美術館「ガレージ」が一つになります。美術館「ガレージ」は6月、レム・コールハース設計の新しい建物をオープンしますし。

 

-アバンギャルドの展示会は世界で割とひんぱんに開催されていますが、トレチャコフ美術館創設者のロシア絵画のコレクションはほとんど欧米では知られていません。コレクションの海外展開はありますか。

  2014年ソチ冬季五輪があって、アバンギャルドはロシアの公式ブランドとまではいかなくとも、それに近い解釈を得ることができましたし、展示会も定期的に世界のさまざまな国で開催されています。トレチャコフのコレクションについては、ロシア美術、特に「ロシア絵画の黄金時代」とも言える19世紀前半の美術が世界で過小評価されていると言うことができます。同じ時代の「デンマーク絵画の黄金時代」がメトロポリタンで大成功を収めたことを覚えています。ロシア美術の類似する展示会にも同じように反響があるでしょう。将来的にこのようなプロジェクトができればいいですね。

 

-海外の美術館との活動は続きますか。

 もちろん関係は強化していきますし、最近テート・モダンで開催されたマレーヴィチの展示会のように、重要なプロジェクトに参加するよう努めてまいります。

 対ロシア制裁にもかかわらず、ロシアのプロジェクトへの参加を望まない欧米の美術館はないようです。館長に就任して、世界中の関係者からたくさんのお祝いの言葉をいただきました。支援を嬉しく思いますし、協力もしていきたいです。

 私にも自分なりの発展や展示会のアイデアがあります。まずは現状を把握し、その後披露し、博物館の幹部と協議していきたいです。グッゲンハイム美術館の議論を覚えていますが、館長はまず職員の話を聞き、最後に自分の意見を述べ、時に自分の観点に反するような最終決定も行っていました。私はそれがとても気に入りました。

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