『霧につつまれたハリネズミ』、ソ連の切手。
ノルシュテインは、独ソ戦下に、母の疎開先のペンザ州で生まれた。父は出征していた。父の職業は、木材加工工場の機械の整備工で、母は幼稚園の保母。
モスクワで育ち、1959年に、アニメスタジオ「ソユーズムリトフィルム」付属のアニメーター養成2年コースに入る。
61年に卒業すると、ソユーズムリトフィルムのアニメ制作に参加する。
『チェブラーシカ』制作にも参加
制作に参加した作品は50を超え、そのなかには、『ワニのゲーナとチェブラーシカ』も含まれる。
自ら監督した作品としては、『25日―最初の日』(1968)、『ケルジェネツの戦い』(1971)、『キツネとウサギ』(1973)、『アオサギとツル』(1974)、『霧の中のハリネズミ』(1975)、『話の話』(1979)などがある。
手塚治虫、宮崎駿などをはじめ、日本にもノルシュテイン作品のファンは多い。
1981年以来、従来のアニメの常識を覆した『外套』を制作しているが、その芸術的価値を誰もが認めながら、資金難で未だに完成できない。
『外套』の驚くべき表現力
CGによる制作には批判的で、主に、細密に描かれた切り絵を使う。
彼の制作プロセスを追ったドキュメンタリー番組によると、例えば、「外套」の主人公である下級官吏の場合、まず、ピンと来た人間の写真を集めて、イメージを自分のなかで創り(そのなかには、指揮者のゲンナジー・ロジェストヴェンスキーもいる)、絵を描いて、その各部分を別々に細かく動かせるようにする。鼻なら、鼻梁、尾翼などを微妙に動かして、生身の人間にもないような表情の変化を創り出す。そこからキャラクターの魂の奥底がみごとに透けて見えてくるさまは、驚くよりほかはない。
アニメ版『外套』は、ゴーゴリの原作をも、ある面で凌いでいるかもしれない。
「最も恐ろしいもの」
ノルシュテインがこの作品で描き出したのは、単なる貧困とか孤独とかいったものではない。それについて、ノルシュテインは、ゴーゴリの原作に仮託しつつこう言う。
「あの作品の幕切れは、文学者たちが言っているより、もっとずっと恐ろしいものです。その恐ろしさから自由である人間は一人もいません」。
*ノルシュテインの制作ドキュメンタリー(露語)
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