ロシアは、鉄道の総路線長において世界第三位の国である。そのため、大多数のロシア人が、他に何も無いようなところでも、鉄道だけは通っていると暗黙のうちに思っているのも不思議ではない。しかし、そのロシアにおいてさえ、鉄道で行くことのできないきわめて広範な地域がある。
アルタイ共和国(通称ゴールヌィ・アルタイとも)はロシアで最も人気のある観光地の一つだ。旅行者をひきつけているのは山、湖、森といったその豊かな自然である。ここには、ゴルノ=アルタイスク(アルタイ共和国の首都)にある唯一の空港に飛行機で行くか、または自動車で行くしかない。
共和国の大部分は自然保護区となっており、山々が連なる複雑な地形を持ち、山間には急流が走る。人口は21万人とさほど多くない。最も近い鉄道駅は、隣のアルタイ地方の都市ビイスクにある(アルタイ共和国とアルタイ地方はそれぞれ別の連邦構成主体)。
ビイスクとゴルノ=アルタイスクを鉄道で結ぶ計画は、早くも20世紀の初頭にあった。二都市間の距離は120kmに過ぎず、シベリアの基準で言えばこれは「距離」のうちに入らない。しかし、まずは第一次世界大戦で計画が中断し、その後はロシア内戦、さらにその後は計画そのものが「適当な時期」まで延期された。路線建設の認可が下りたのはやっと1980年代のことだったが、ソ連が崩壊したため、またしても建設計画を実行するには至らなかった。現在、再び鉄道建設のプロジェクトが立ち上げられているが、今のところ着工されていない。
トゥヴァも、人口から言えばあまり大きくないシベリア南部に位置する共和国だ。34万人が暮らしているが、その3分の1は首都のクズルに集中している。空港も自動車道も整備されているが、鉄道建設に関しては、計画が持ち上がったのさえ2010年代に入ってのことである。それもすべて、複雑な山地とタイガのため、相当な建設費が見込まれるせいだ。
計画では、クラギノ駅(クラスノヤルスク地方南部、南シベリア鉄道支線)からクズルまでを結ぶ。この路線が実現すれば、単に二つの地域を結びつけるのみならず、トゥヴァの石炭資源開発を促進し、数千人の雇用を生み出すことにもなる。今のところ、鉄道建設計画は2026年まで延期されている。
この地域は大部分が北極圏に位置している。人口の半分に当たる2万3000人がナリヤン・マル(ネネツ自治管区の行政中心地)に住んでおり、その他の住民は小さな居住区に散らばっている。ここはもちろん、驚くほど美しい自然が残されている土地で、北極海に囲まれ、広大なツンドラと丘陵地帯が続く。また、大量の石油と天然ガスが産出する土地でもある。
しかし、その厳しい地理的条件のせいで、ネネツ自治管区はつい最近まで、短い夏の間だけは水路もあるが、基本的には空路でしか「本土」と結ばれていない陸の孤島であった。自動車道ですらあまり整備されていない。ここはヨーロッパロシアで唯一鉄道のない地域だ。最も近い駅は、ナリヤン・マルから350km離れたコミ共和国のウシンスクにある。
チュクチには基本的に飛行機でしか行くことができない。5万人の人口に対して11の飛行場がある。主な都市間交通はヘリコプターか小型飛行機だ。アスファルトで舗装された道路は住民居住区の周囲にしかなく、ひとつの居住区から別の居住区へ移動するには、空路か、または冬の間だけ通行できるようになる道(たとえば、凍った川や湖の上など)を利用するしかない。鉄道がないことも含めて、すべては非常に複雑な地形と採算性の問題ゆえである。
マガダン州はチュクチより南に位置しているが、ここも「本土」から切り離された陸の孤島だ。広大なこの土地に暮らすのはわずか13万5000人で(そのうち9万人は州都のマガダンに住んでいる)、鉄道建設はまったく採算が取れない。また、マガダン州はオホーツク海への出口があるため、必要なものはすべて海路で運ばれる。
にもかかわらず、20世紀の半ばにはここに鉄道があった。これは木材と石炭を運び出すための狭軌鉄道だったが、1950年代末までにはすべて解体されてしまった。
マガダン州を通る現代的な鉄道の建設計画は存在しており、バイカル・アムール鉄道の支線となる予定だ。しかし、これはまだ遠い将来のことである。
カムチャツカ半島は、極東に位置するアクセス困難な地方で、飛行機か船でしか行くことができない。1970年代に路線長5000kmにも及ぶレナ・カムチャツカ鉄道建設という壮大な計画があった。この路線はイルクーツク州ウスチ=クート駅とカムチャツカ地方の中心地ペトロハバロフスク・カムチャツキーを結ぶはずであった。建設計画の検討が2010年代に再開している。
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