「私たちの望むものは?」

ロイター通信
 汚職に反対する集会は、モスクワその他のロシアの都市で行われた。多数の参加者の拘束、特別任務民警支隊(OMON)との衝突、国民との対話の要求、これらが、ロシア連邦首相の活動に関する市民活動家らの調査へのリアクションとなった。

 3月26日、汚職に抗議するデモが、ロシア全土で行われた。規模が最も大きかったのは、モスクワ中心部のトヴェルスカーヤ通りにおけるもので、参加者の数は、内務省によると、7~8千人、主催者らは、発表していない。

 今回のデモは、ドミートリイ・メドベージェフ首相および その12億㌦相当の、いわゆる秘密の”汚職帝国”に関する「汚職との闘いの基金」および野党勢力指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏による調査についてコメントしなかった当局の沈黙に対する市民の返答となった。当局は、多数の参加者の拘束と警察との衝突で終わったモスクワでのデモを含むほとんどのデモを許可しておらず、モスクワだけでも、約850人が拘束された。

 「彼はヂモーン(首相の愛称)ではない」というタイトルの動画がSNSに公開されてから、1300万人がそれを視聴した。デモの数日前、モスクワの警察は、無許可のデモで何が起きても責任は負いかねるとし、デモの参加者らは、ふつうの散歩者を装ってクレムリンの方へ移動していた。

 

あなたが望むものは?

 「味方をどう見分けたらいいのかなあ? あいつは権力側だろうかそれとも?」 デモの15分前、落ち着かない群衆の中では、あちこちでそんな声がしていた。人々は、地下鉄から出ると、前の人の背中を見て、その後ろに列なった。警察官らへ不信の眼差しを向けながら。

 今回のデモには、野党にとってはお馴染みであるデモ隊を先導するリーダーもメガフォンも明確な行動プランもなく、誰もが、動けばいいのか止まればいいのか誰かを待てばいいのか分らなかった。

ロイター通信ロイター通信

 「私たちは、何を望んでいるのでしょう? 私たちは、闘うことそれとも何を望んでいるのでしょう?」インテリ風の青年は、こう語る。

「私たちに分かっているのは、当局との対話は断たれたということ。私たちは、約束ではなく変化を欲しています。私たちがここへきた第一の目的は、メドベージェフばかりでなく政府の退陣です。」

 群衆の中では、年金受給者の母親を連れた男性が、黙って耳を傾けている。環境エンジニアでオレーグと名乗るその男性は、こう語る。

 「私たちは、みんな、ナバリヌイ氏が公開した動画への返答を求めているのです。メディアも、当局も、そんなことは何もないかのように口を噤んでいます。けれども、あれは、どうやら本当のようです。嘘だとしたら、なぜ、彼らは、何も否定せず、中傷のかどでナバリヌイ氏を訴えないのでしょう。私の両親は、年金受給者ですが、働いています。私の給料だけでは、食べていけないからです。当局は、我慢しろと言いますが、何のためか説明して欲しいです。とにかく、なんでもいいから。」

 

思想のために

 クレムリンから2,5キロほどのプーシキンスカヤ駅では、人の渦ができており、群衆は、警察に包囲されて車道へ出られないため、どうにかこうにか歩道を進んでいる。車両の通行は、部分的に麻痺し、運転手らは、デモ隊に警笛を鳴らし、上空では、ヘリコプターが巡回している。拡声器からは、地下鉄でソコーリニキ公園(市当局は、そこをデモの場所に指定したが、主催者らは、拒否した。)へ移動して集会を開くよう人々に呼びかける声が流れてくるが、どうやら、そんな忠告に耳を傾ける者はいない。

 群衆の中には、学生が多く、そのほとんどは、自分たちはナバリヌイのためではなく「思想のために」そこにいるという。そこへ、ナバリヌイ氏拘束の報せが携帯電話へ届く。デモの参加者らが、拘束された政治家を連行するバスの進行を阻むべく車を寄せると、特別任務民警支隊(OMON)は、警棒を振るいはじめ、このニュースは、瞬く間に広まった。

アレクセイ・ナバリヌイ氏を警察に拘束された=ロイター通信アレクセイ・ナバリヌイ氏を警察に拘束された=ロイター通信

 国立研究大学・高等経済学院(HSE)の学生であるコンスタンチーンさんは、こう語る。「私は、何らかの反応を得るためにここへきました。なぜなら、彼らは、何一つ語らないのですから! はっきり言って、これには、腹が立ちます。国民は、税金を払い、彼ら(当局)は、その税金で、柔らかな言い方をしても、厚かましく、暮らしているのですから。」

 隣りにいる別の二人の学生は、乱暴な言葉で非難の声を上げ、道路の反対側で特別任務民警支隊(OMON)が誰かの手足を掴んで護送車へ運んでいく様子を撮影しはじめた。

 「あなたたちは、どうしてここに?」

 「私たちは、みんなと同じように、返答を得たいのです。これは、私たちの最初の行動で、私たちは、SNSを通じてやってきました。返答がないなら、またやってきます。」

 「返答があっても、それがあなたたちを満足させないとしたら?」

 「今のところ、分かりません。そのことは、考えていませんでした。この人たちがみんな家でじっとしていなかったなんて、すごいです。こんなことは、ずっとありませんでした!」

あなたは、今回のデモをどう思いますか?

コンスタンチーン・カラチョーフ、独立系の「政治専門グループ」主宰 かなり上首尾なものだったと思います。この場合、参加者の数は、問題ではありません。私たちは、無許可の集会へ参加した人がみんな相当のリスクを冒したことをよく知っており、抗議が若返りつつあるのを感じています。これは、政権にとって好ましくないシグナルです。若者たちは、不快感を抱いており、ナバリヌイ氏は、これを巧みに利用しました。じっくり考えるためのきっかけです。ドミートリイ・メドベージェフが単にきっかけにすぎないことは、火を見るより明らかです。上の世代とは異なり、この世代では、安定ではなく変化こそが貴いのです。 セルゲーイ・マールコフ、政権に近い「政治研究所」所長 合わせて十都市の数万人がデモに参加しているわけで、私たちは、ロシアにおける反体制・親欧米の野党指導者ナバリヌイ氏が国民に認められている点を指摘することができます。有権者ではなくデモ参加者としての意義を有する若者たちが、俄かに存在感を増してきました。年金生活者らは、投票し、若者たちは、街頭で闘っています。そして、街頭での衝突も辞さない若い人たちのネットワークが、形成されつつあります。今後については、予断を許しません。自由化と同様に、締めつけの強化も、考えられます。モスクワ中心部でのデモの禁止は、かなりこじつけられた口実[デモは、住民に不便をもたらす。]によって実施され、彼らは、人為的に郊外へ締め出され、そこには、挑発性があったわけですから。