Tu-154、墜落の原因は?

救助隊がTu-154の破片や遺体の捜索に当たっている

救助隊がTu-154の破片や遺体の捜索に当たっている

=EPA
 ロシア軍機Tu-154がシリアへの途次、黒海に墜落。搭乗していた全員が非業の死を遂げた。捜査当局は3つのシナリオを想定している。すなわち、パイロットの操縦ミス、機器の故障、テロ。

 ロシア国防省所属の航空機Tu-154が25日朝、シリアに向かう途中、黒海沿岸から1.5㎞で墜落した。

 搭乗者については様々な情報が流れているが、現時点で確認されているところでは、92人の搭乗者のうち、68人が軍楽隊「アレクサンドロフ・アンサンブル」の音楽家であり、9人がジャーナリスト、8人が乗務員だった。救助隊はこれまでに7人の遺体を発見している。

 プーチン大統領はメドヴェージェフ首相に対し、国家委員会を設置し、自ら捜査の進捗を監督するよう命じた

 ロシアのメディアでは、悲劇は航空機の上昇中に起きたが、乗員は救難信号を出していなかった、と報じられている。

 現在、救助隊および捜査委員会が現場で作業に当たっている。一方では当局の専門家がフライトに先立って作成された各種の書類を回収しており、併せてフライトを組織した責任者や、空港の技術系職員への聴取も行われている。

 専門家は現時点で3つのシナリオを考えている。

 

1、機器の故障

 民間航空連盟「アエロポルト」会長のヴィクトル・ゴルバチョフ氏は、離陸時にパワー不足が起きたのではないか、との考えを示している。

 「やはりエンジンに何かが起きたのだ。燃料なのか、エンジンの故障か、まだ分からず、推測は難しい。しかし、一番困難なのは、もちろん、離陸の瞬間である。出力が、速度が足りず、きりもみ状態で降下したのだ」

 墜落機は1984年製。最後に修理を受けたのは2014年。定期点検は今年9月に行われていた。相当に年季の入った航空機ということになるが、「それは問題にはならない」とゴルバチョフ氏。

 「世界中で30年、50年、60年、またはそれ以上の機齢の航空機が飛んでいる。年数にさしたる意味はないのだ。フライトに適するかどうかという点では、当該機は要件を完全に満たしていた」

 しかし、これと見解を異にする専門家もいる。退役大佐でタス通信の軍事専門家であるヴィクトル・リトフキン氏によれば、ロシア軍の航空機のうち、軍用機はともかく、旅客機にとっては、現在は不遇の時代であるという。

 「ロシア国防省の旅客機の骨格をなすのがちょうどこのソビエト製Tu-154である。航空産業の壊滅により、90年代以降、軍用の旅客輸送機は全く製造されていない」

 リトフキン氏によると、国防省は外国の旅客機を買い付けることもできず、今や軍はTu-154を何で代替することもできない状況だという。

 「捜査が終結した後も、軍は同じ航空機で飛び続けることになるだろう」とリトフキン氏。

 

2、パイロットの操縦ミス

 国防省によれば、墜落機の操縦に当たっていたのは一級飛行士ロマン・ヴォルコフ氏。氏の飛行時間は3000時間を超えている。

 「最高度に経験を積んだ乗員だった。彼らは同じ航空機で何回かSu-30、Su-35、Su-24のフメイミム基地への飛行を先導している」との軍当局者の言葉をイズヴェスチヤ紙が伝えている。

 しかし専門家によれば、捜査当局は墜落の主たる原因のひとつとして、パイロットの操縦ミスという線を検証するという。

 「いずれの説も除去できない。燃料の品質が悪かったのかもしれないし、テロだったのかもしれない。パイロットのミスにより、高度が非常に急速に上がり、急旋回した挙句、きりもみ下降した可能性さえある」とリトフキン氏。

 

3、テロ

 今回の悲劇を、2015年10月30日に発生したシャルム・エル・シェイク(エジプト)発サンクトペテルブルク行き民間旅客機、エアバス321-231の一件との類似において論じる専門家もいる。

 今から約1年前のその日、航空機尾部の規格外貨物収納庫にテロリストが仕掛けた爆弾が炸裂、当該機は離陸22分後に空中崩壊し、数千メートルの高度から落下した。

 今回は離陸後7分で悲劇が起きたのだった。

 「今度のケースでは、気象条件は平常通りだった。機体やエンジンに何か起きたのなら、単に向きを変え、空港への進路を設定し、沿岸部に着陸すればよかった。しかし現実には、急激な降下が起こった。このようなことは、何か爆発したとか、何か剥離したとか、そういう非常事態が起きたときに見られることなのだ。このタイプの航空機で何か剥離するとすれば、それは尾部だ」。ロシア空軍少佐で飛行士・飛行教官のアンドレイ・クラスノペロフ氏がラジオ「コメルサントFM」で述べた。

 それ以外の事態であれば、飛行士は動作不良について冷静に管制塔に連絡し、救難信号を出したはずだ。しかし、そうはならなかった。

 「ということは、離陸7分目に何かしら尋常でない、急激な変化が起きたということだ。乗員にあらぬ疑いをかけることもできかねるし、機器はそう急に壊れるものではない。それに、既に沿岸部で、破片で負傷した人が見つかっている。それすなわち、無秩序な落下の中で破片が地面に落ちていたということであり、ということは、航空機は空中で爆発した、ということだ」とクラスノペロフ氏。