“前科者”は服役後に何をするのか

作業中の受刑者=

作業中の受刑者=

パーヴェル・リシツィン撮影/ロシア通信
 元受刑者の就職は難しいのだろうか、多くがビジネスを始めるのはなぜだろうか。ロシアNOWが取材を行った。

 ロシアの元受刑者の多くは、刑務所から出所した後、ビジネスを始める。そして、他の元受刑者を助ける。「ロシア連邦刑執行庁」の公式データによると、2016年3月初めの時点で、ロシアの刑務所には65万613人が服役している。その大半の52万6343人は、矯正院(IK)という刑務所に服役している。IKは全国で720ヶ所ある。

 そのうちの一ヶ所、イヴァノヴォ州のIK-5で服役していたのが、エヴゲニー・モロゾフさん。出所した後、モスクワ郊外のノギンスク市で指物工房を開いた。ここでは元受刑者が注文に応じて家具をつくっている。地元では、ここの安くて質の高い木製家具が好評だ。

 

IKのものづくり

 「指物工場をつくるアイデアが浮かんだのは、まだIKにいた時。多くの人の指物技術が優れていて、木材から素晴らしいものをつくっているのを見た。それで夢ができた。出所したら、工場をつくろうと」とモロゾフさん。

 IKの生産時間は8時から23時半まで。受刑者は家具をつくり、鉄やテキスタイルでものづくりを行い、寝具を縫製している。作業は義務である。「一番高い月給の水準は1500ルーブル(約2500円)。通常は600~700ルーブル(約1000~1100円)。自分でやりたいことを選べる。私は指物を学んだ」とモロゾフさん。

 出所後しばらくは、建設作業に従事していた。最初は慣れるのに苦労したが、最後には参謀本部の改築工事にまで参加できたと、モロゾフさんは打ち明ける。このようにして貯金し、指物工房をオープンさせた。工房は小さい。300平方メートルの広さで、8人が働いているだけだ。

 モロゾフさんの奥さんは広告業を行っており、近隣地域の前科者に安定した職を提供するための支援ウェブサイトを運営している。「出所して1~2年たっても無職のままの人が多い。多くは酒に走る」とモロゾフさん。

 

更生はどのように行われているか

 前科者の就職が困難というのは本当だろうか。ロシアには前科者とその家族を支援する慈善基金「服役ルーシ」が存在する。基金を率いているのは、オリガ・ロマノワさん。ロマノワさんに恩を感じている人は国内各地にいる。

 「国はほとんど更生に取り組んでいない。就職については、飲食店の店員や積荷作業員といった仕事に就きたがらない人だけが、就職できない。仕事を選ばなければ、意欲次第で普通に就職できる」とロマノワさん。

 とはいえ、連邦刑執行庁によれば、国内には社会更生センターが634ヶ所ある。毎年7400人ほどの元受刑者が、親族との関係回復の支援を受けている。

 長年更生の問題に取り組んできたロマノワさんによると、社会では少しずつ、だが確実に、元受刑者に対する態度が変化しており、冷ややかな目を向けられることはないという。とはいえ、支援は慎重に行わなくてはいけない。「元受刑者が、すべてを無料で得ることに慣れて、働く意欲を完全に失ってしまうような支援になってはいけない。更生がうまくいくかは本人次第。本人の学歴が高いほど、更生がうまくいくことが多い」とロマノワさん。

 出所後、多くの人が農場や、モロゾフさんのように工場をつくって、事業者になる。そして、元受刑者の仲間を雇用する。「飲酒の問題がないことが重要。仕事は優れた更生手段だと思う」とモロゾフさん。

 

有刺鉄線のない矯正

 もう少しデリケートな問題は、罪を犯した未成年者の更生だ。連邦刑執行庁の2015年末の統計によると、ロシアには未成年者の教育院という少年院が32ヶ所あり、1654人が収容されている。2000年代の統計と比べると、収容人数は大きく減少している。2003年には1万6491人だった。現在、18歳未満の少年少女の多くが執行猶予を受けることができている。そうなれば裁判所は一定の義務を科しながら、少年少女を自由にできる。

 サンクトペテルブルクには12年前、ワシリエフスキー島の「聖大致命女解繋者アナスタシヤ教会」の主任司祭の提案により、「聖大ワシリイ・センター」という施設が創設された。これはロシアで唯一、国の運営ではない、問題を起こす未成年者の無料受け入れ施設である。サンクトペテルブルク市内の未成年者をここで生活させ、支援している。更生プログラムの責任者であるアルカディー・クラチャンさんによると、少年少女は保護観察処分で自宅にいると、罰則を受けていると実感できなくなり、大人になって再び犯罪を犯す可能性があるのだという。

聖大ワシリイ・センター=報道写真聖大ワシリイ・センター=報道写真

 少年院という雰囲気や有刺鉄線は聖大ワシリイ・センターになく、収容者は学校に通ったり、博物館に行ったり、またサッカーで遊んだりしている。家庭料理、無料の体育、独自の陶芸工房などのあるこの施設は、裁判官や警察官によく知られており、両親の依頼で子どもたちはここに送られてくる。喫煙、薬物摂取、飲酒は厳しく禁じられている。

 開設されてすでに12年。210人ほどがここに暮らし、その後違法行為を行ったのは20人ほどにとどまっている。「現代の罰則システムは、人、特に青少年を矯正しない。当施設で若者はスポーツ、社交ダンス、陶芸をすべて無料でしている」とセンター職員のデニス・ニキチェンコさんは話す。

 出所後に夢の工場をつくる事業者と同様、聖大ワシリイ・センターの若者は今のところ、良い例外にすぎない。連邦刑執行庁の統計によると、2015年に初めて刑務所に入った人は19万4310人、2度目に入った人は13万1300人、3度目、4度目または5度目に入った人は19万9472人であった。

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