「何か不測の事態が起きた」

EPA撮影
 ロシア政府当局には今のところ、224人の犠牲者を出したロシア機墜落事故の原因について、確固たる説はなく、フライトレコーダーの解析で「確かな情報」が得られるのを待っている状態だ。一方、専門家らは、天候は原因ではあり得ないとし、機体に何か「不測の事態」が起きたと推測する。

「フライトレコーダー解析が先決」

 ロシア政府の航空当局は、今のところ墜落したロシア機(エアバス321)について、何らかの説を示すことは差し控えている。31日、エジプトの保養地シャルム・エル・シェイクの空港からサンクトペテルブルクに向かったロシア・コガルイム航空のチャーター機がシナイ半島に墜落し、乗客乗員224人の全員が死亡――。

 マクシム・ソコロフ連邦運輸大臣は、事故原因について何か言えるのは、フライトレコーダーの解析後のことだと述べている。そのフライトレコーダーは既に見つかったものの、エジプトとロシアのいずれで解析されるのかは、未だ決まっていない。

 ロシア航空局もまた、機体の故障、乗員のミス、あるいは何らかの「作用」が事故を引き起こしたと断定できる根拠はないとしている。「事故をめぐる状況について確かな情報が出てくるまでは、何らかの説を提出しそれについて議論するのは無意味だ」。こうロシア航空局のスポークスマンは述べている。

 

事故の原因は?

 先に、ロシアで過激団体として禁止されているイスラム国(IS)系のテロリストが「ロシア機を墜落させた」とする犯行声明を出したとマスコミで報じられたが、ロシア運輸省は、「この情報は信憑性に乏しい」として否定した。エジプトのシャリフ・イスマイル首相も、「疑惑を呼び起こすような活動の活発化」は見られなかったと述べている。

 一方、民間航空連盟「アエロポルト」会長のヴィクトル・ゴルバチョフ氏がロシアのラジオ局「コメルサントFM」に対して指摘したところでは、事故原因は、落雷などの天候、気象条件ではあり得ない。その理由は、気象庁の情報によると、現場付近の天候は良好で、視界は10キロあったからだという。これを踏まえて同氏は、何らかの不測の故障、破損(例えばエンジン火災)が起きたのではと推測し、乗員のミスも排除できないとする。

 だが、テストパイロットで国際航空委員会の名誉総裁を務めるマゴメド・トルバエフ氏の意見は違う。「技術面で十分な整備がなされなかったとは信じがたい」。「コメルサントFM」に対し同氏は、かりにエンジンが一基停止しても、問題なく飛行できるし、それについて地上と交信したはずだが、それは行われなかった、と指摘する。「これはつまり、機体に不測の事態が起きたことを示唆する」。トルバエフ氏はこう結んだ。


SOSは発せされたか?

 レーダーから機影が消えたのは、離陸の23分後であることは分かっている。当初、航空当局は、その直前に機長が無線の不調を訴え、カイロ空港への緊急着陸を要請した、と報じていた。ところがその後、英BBCが、エジプトの民間航空大臣の話として、乗員からの緊急着陸要請、SOS、機内での問題発生などに関する報道を打ち消した。

 また、民間のポータルサイト「フライトレーダー Flightradar」のデータによると、事故機は、レーダーから消える前に急激に1500メートル高度を下げていたという。

 さらに、エジプトの救助隊の隊長がロイター通信に伝えたところでは、事故機は墜落に際し、真っ二つになっていた。「燃え尽きた尾翼部分と、それより大きな部分で、こちらは岩に激突して破壊された」。また犠牲者の大半は墜落地点から半径5キロ以内で、焼け焦げた状態で見つかったという。

 エジプト首相は既に、129人の遺体が発見されたことを確認している。

 「今日、救助隊は事故現場からの遺体の運び出しの作業を最大限行い、直ちに空路でペテルブルクに送る予定だ」。11月1日朝、ロシア非常事態省のウラジーミル・ステパノフ次官はこう述べた。

 ロシア・コガルイム航空機の墜落事故に関し、2件の容疑で捜査が開始され、同社の捜索が始まった。

 また、この事故により、11月1日は国民服喪の日と定められた。