大揺れ保険改革

保険改革に反対する約5000人が参加した集会、11月、モスクワ市=ビタリー・ラグリン撮影

保険改革に反対する約5000人が参加した集会、11月、モスクワ市=ビタリー・ラグリン撮影

ロシアでは2014年末までに10年から続いてきた保健制度改革が完了することになっている。そしてモスクワでは医療機関の削減と再編という痛みを伴うプロセスが始まった。

 当局は、病院の削減はそれ自体が目的なのではなくロシアの医療をより効率的なものにするための手段であると主張している。

 「モスクワの医療の崩壊をストップ!」をスローガンにした集会が11月に行われ、保健改革に反対する約5000人が参加した。

 演壇の背後には「治療する権利と健康である権利のために」と書かれたプラカードが掲げられている。

 

プーチン首相が表明

 この改革は10年4月、当時のプーチン首相によって表明された。

 導入されるモデルは無料の医療援助を受けたい人はすべて義務的医療保険システムに登録されて保険証を取得することを前提としている。保険証は医療機関や治療費を支払う保険会社を選択する権利を与え、追加のサービスは有料となる。

 医療機関は改革が実施されるまでは、連邦や地方自治体から供与されていたが、今後は雇用者が納める税金によって形成される義務的医療保険基金から得なくてはならない。

 

医師らが立ち上がる

 14年10月、28の医療機関の閉鎖と5000人の解雇を見込んだモスクワ保健局のプランが明るみに出たことが引き金となって、怒った医師たちは街頭へ繰り出した。

 モスクワでの集会の共同組織者で非営利社会運動「共にしかるべき医療を求めて!」のアレクサンドル・アベリュシキン氏はこう語った。

 「抗議は、実際に数十もの機関が閉鎖され何百人もの人が解雇されるのを目の当りにした時に始まったのです」

 モスクワのアレクセイ・フリプーン局長はこう述べている。

 「数十年の間に、病院と診療所における医療援助の量に偏りが生じました。診断および治療のリソースの大部分は病院に集中しているので、病院への検査入院はあたりまえのこととなりました」

 医師らは、こうした論拠に納得していない。モスクワ第11病院のオリガ・デミチェワ医師は、問題は診療所を支えたいという思いではなく当局と民間企業の癒着にあると語る。

 専門家らによれば、いまだに保険会社の患者獲得競争という改革の目玉の一つが始動していない。

 アベリュシキン氏はこう語る。

 「私たちは独立採算制へ移行させられようとしていますが、医療は資金が投入されるべき分野なので、それは不可能です」

 「社会経済研究センター」のダビド・メリクグセイノフ所長はこう語った。

 「義務的医療保険制度はそれが良いものであれ悪いものであれ、もはや廃止することはできません。それを選択した以上、私たちはその枠内で効率的なものを築いていかなくてはならないのです」

 

過重な負担強いられるロシアの医師

 非営利の「社会経済研究センター」のダビド・メリクグセイノフ所長はロシアの医師が置かれた複雑な状況を指摘する。

 「ロシアにおける人口1000人あたりの医師の数はフランスの2.5倍、米国の3倍ですが、欧米の方が少ないのは看護師や衛生員など中間的な医療スタッフが充実しているためです。ロシアの医師は報告や分析といった仕事も多くこなしており、過重な負担を強いられています」

 モスクワ市当局によれば、医師を削減するプランは、ある分野における医師の過剰と別の分野における医師不足が根拠となっているという。

 専門家を増やすために新たな技能習得が医師らに奨励されているが、医師らは衛生員の仕事である点を指摘している。

 医師の給与を引き上げる約束という別の側面も、見落とすことはできず、メリクグセイノフ所長はこう述べる。

 「大統領令というものがあり、その枠内で収めなくてはならない予算というものがあるので、今の状況では、正規のスタッフの給与を引き上げるためには、人員を減らすしかありません」