ルスラン・クリヴォボク撮影/ロシア通信
ミトロファノワ氏によると、ユネスコ・モスクワ事務所が閉鎖されるのは2015年9月だが、この決定そのものは、2008年になされており、その理由は何よりも、ユネスコに各国から入る拠出金が減ったことだという。
「閉鎖は既に予定されていて、2008年に決められていたが、その後、絶えず何かが先延ばしされてきた」。同氏はこうタス通信に語った。「周知の通り、ユネスコは資金難に陥っており、いつも追加の財源を探している」
ミトロファノワ氏によれば、ユネスコ・モスクワ事務所の閉鎖決定は、各国における事務所の「最適化」の一部をなしている。「この問題は、常に日程に上っており、あちこちで閉鎖されたり開設されたりしている。今回の決定もまったく資金上の考慮からなされたものだ」。同氏はこう付け加えた。
パレスチナ加盟の余波
ユネスコが資金難に陥ったのは数年前のことだ。パレスチナが正式加盟したことを受けて、アメリカがイスラエルに続き、分担金の負担を停止したことに端を発する。その結果として、ユネスコの予算は22%減となった。
ちなみに、ユネスコの歴史のなかでは、同様の状況が以前にもある。1984年、ロナルド・レーガン米大統領は、この組織の反米主義、浪費、ユネスコ憲章からの逸脱を非難して、脱退を決定した(18年後の2002年9月、米国は再加盟すると宣言したが、それが実現したのは、1年後の2003年9月29日のことだった)。
ロシアNOWがロシア外務省から聞いたところでも、状況は専ら経済難によるものだという。以前、ゲンナジー・ガチロフ外務次官はインターファクス通信に対して、ユネスコ・モスクワ事務所の閉鎖は2012年に決定されており、「計画の一部」に入っていると述べていた。「いかなる政治的原因もないし、ロシアとユネスコの関係にはいかなるセンセーションもない。協力の縮小もない。我国とユネスコの関係は成功裏に発展している」
ガチロフ外務次官の指摘によると、現時点で、ユネスコ・モスクワ事務所の課題はすべて遂行されている。「この事務所には、独自の目的があり、“クラスター事務所”と呼ばれていて、その活動はCIS(独立国家共同体)のすべての国に及んでいたのだが、その後状況が変わり、ウクライナもグルジアもそこから抜けた。こうして事務所の管轄範囲は限定的になり、CIS全体を統括することはなくなった」
ガチロフ次官の説明では、ロシアには、ユネスコの事業に関する委員会が設立されており、ユネスコの主な活動をカバーする小委員会が活動していて、その支部はいくつかの連邦構成主体(自治体)に開設された。この委員会が、ユネスコの機能を、独自に遂行していくという。
「専門家が減っていく…」
モスクワ建築大学教授で建築史を専門とし、文化遺産保護の専門家でもあるナタリア・ドゥシキナ氏は、ユネスコ・モスクワ事務所の閉鎖が、文化遺産保護と研究活動にネガティブな影響を与えるだろうと言う。
「モスクワ事務所は、パリに本部を置くユネスコの一大拠点で、多数の専門家がいる。研究活動を行い、教育プログラムの実施する本当に“大きな”事務所だった。今や、この分野では専門家が少なくなり、ハイレベルの支援と情報を得られる可能性も減る。ロシア領内の世界遺産の数は増えているのだから、こうした専門家は不可欠なのに…」
ドゥシキナ氏は、ロシアにはユネスコに保護されている、保存が極めて難しい遺産があると指摘する。「例えば、世界遺産のサンクトペテルブルク歴史地区は、最も巨大な都市建造物群だし、ロシア北西部のオネガ湖に浮かぶキジ島の木造建築群のようなユニークなものもある。閉鎖が一時的な措置だと思いたい。この事務所の誕生は重要な文化的事件で、旧ソ連圏のあらゆる教育、研究プログラムは、ここでコーディネートされてきた」
社会会議(大統領の諮問機関)付属・国際協力及び民間外交に関するロシア社会委員会議長のセルゲイ・オルジョニキゼ氏もやはり、モスクワ事務所閉鎖は正しくないという意見だ。その理由は、文化遺産の保存と研究が必須だから。「人員が減らされるというのなら、まだマシだったろうが…」
現在、ユネスコのモスクワ事務所は、ロシアのほか、アゼルバイジャン、アルメニア、ベラルーシ、モルドバの各共和国を管轄しており、今年で開設20年を迎える。
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