写真提供:個人アーカイブ
老後の夢
アレクサンドルさんとタチヤナさんはどちらも年金生活者で、冗談が大好きだ。2人あわせて115歳になる。アレクサンドルさんはモスクワ州文化省情報局に務め、タチヤナさんは小さな事業を営んでいた。夫妻は以前から旅行をしていて、今回の旅までに80ヶ国をまわっていた。だが世界旅行が夢だった。
「昨年年金生活に入って、今がその時だと思った。この目的のために100万ルーブル(約300万円)預金していたが、旅行には180万ルーブル(約540万円)かかった。不足分はマンション、車庫、別荘の賃貸でまかなった」とアレクサンドルさんは話す。
世界旅行に出発したのは昨年10月。当時はまだ、ウクライナに問題なく入国することができた。唯一、税関で護身用のスタンガンを没収された。その時はショックを受けたが、後で感謝することとなった。「アフリカの一部の国ではスタンガンが武器と見なされる。そこで発見されていたら、問題が生じただろう」とアレクサンドルさん。
最初の困難はエジプトで発生した。エジプトでは現地のナンバーをつけた車しか走ることができない。アレクサンドルさんが長い手続きを行っている間、アレクサンドリア近くの港に残っていたタチヤナさんはハエの群に襲われていた。「港に戻ると、ハエから逃げようとしてタチヤナがピルエットをしていた。現地人は立ち止まって、その様子を見ていた。皆にはタチヤナがロシアの民族舞踊の練習をしてたんだと説明した」
エジプトから、外国人に極めて閉鎖的なスーダンに行った。
「モスクワでビザを受け取ることもできなかった。ビザはカイロでようやく入手した。スーダンでは3種のナビゲーターのどれも機能しない。旅行者向けのホテルもないし、女性がシャトルに乗船することも禁じられている。ダルヴィシュ(修道僧)用の宿屋に泊ったこともあった。宿主は自分の部屋に通してくれた」。旅行中、あちこちで客人として招かれたという。
アフリカの道
写真提供:個人アーカイブ
アフリカ大陸の道の走行だけでも話題に事欠かない。どの村の入り口にも独自に設けられた税関がある。「道がロープで区切られていて、わきには自動小銃を持った人が見張りをしている。質問はいつも一つ。我々が食糧を運んでいるか否か。自分たちが持ってる食べ物を取り出さなくてはならなかった。通常は隣の村で調達してきたバナナだった。他の食糧を道中買うことはできないから。”税関員”はこのバナナを没収する。隣村からの持ち込みは“輸入”になるため、いけないのだと説明する。食べたい場合はその村で購入する」とアレクサンドルさん。
10ヶ月間で受けた罰則は5つ。うち3つはタンザニアだった。「現地のロシア人社会が、交通警官がひどいから、気をつけた方がいいと警告してくれた。実際にその通りだった。最初は時速45キロで走っていて止められた。だがレーダーには62キロと表示されている。証明するのは無意味で、『あなた方が速度超過したのを5回確認しました』などと言ってくる。次はうちの車のスピードメーターが時速30キロを示していた時に止められた。この時もレーダーは62キロの表示。3回目はもっとひどかった。速度を時速15キロまで抑えて走っていたのに、止められて、罰金をとられた」
ロシアのパスポートは安全の保証になるという。「ロシアから来たと言うと、アフリカでは握手をされる。『プーチン、カラシニコフ、チョコレート』ってね。書類を見せなくてもパスできたところもあった」とアレクサンドルさん。
*記事全文(露語)
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。