内務省がトーア追跡入札実施

Getty Images撮影

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ロシア内務省が、匿名ネットワーク「トーア」のユーザー追跡システム開発に関する、非公開入札を開始した。専門家は、システムに侵入できるハッカーを探すようなものだと考えている。多額の費用がかかるが、成功するとは限らない。

 内務省の入札の目的は、トーアのユーザーとそのアクセス場所の追跡。国家安全の理由から、入札に参加できるのは国内企業のみ。内務省には最大390万ルーブル(約1170万円)支払う用意がある。

 ロシアではここ1ヶ月で、トーアの人気が急速に高まっている。トーア・メトリクスによると、ロシア人ユーザーの数は20万人に達し、国別で世界第3位となっている。

 「トーア(Tor)」は同名のフリーソフトウェアを使い、傍受から保護された匿名の接続を可能にするプロキシ・サーバー。ユーザーはインターネット上のウェブサイトの訪問、資料公開、メッセージ送信の際、また他のアプリケーションとの作業の際に、匿名性を維持できる。サイバー犯罪者が違法サービスや禁止製品市場へのアクセスが可能な閉鎖的ネットワークを活発に利用することを、内務省は警戒している。

 

プロのハッカー求む

 イズベスチャ紙の取材に対し、セキュリティ大手「シマンテック」ロシア・CIS法人インターネット・セキュリティ部のオレグ・シャブロフ部長は、トーアのユーザーに関する情報を入手できる一般的な手段はないと話した。「ぜい弱性を探す必要がある。そのためにハッカーを雇うのは非現実的。長い時間がかかるし、結果が保証されるわけではない。ハッカーがすでにぜい弱性に関する情報を持っている可能性があり、それを売る用意があるか。このような状況についてはよくわからない」

 「安全インターネット連盟」(インターネット上で危険なコンテンツの拡散を防ぐために設立)のデニス・ダヴィドフ理事は、内務省の目的は正しいものの、課題遂行には資金が不十分だと話した。「研究自体は正しく、ようやく始まったことの方が不思議。提示された金額は少ない。当局が拘束し、その監視下に置いたハッカーに頼んだ方がよかっただろう」

 

一石二鳥狙う? 

 イギリス放送協会(BBC)ロシア語放送の取材に対し、「海賊党」のサルキス・ダルビニャン弁護士は、内務省がサイバー犯罪だけでなく、違法なウェブサイトのブロックにも関心を持っている可能性があると話した。「当局は、ユーザーが匿名でネットワークに入り、ブロックされたウェブサイトを訪問するのではないかと心配している。『ブロガー法』は人気ブロガーに自分に関する情報提示を強制し、事実上匿名性を阻止している。ブロガーがトーアなどのネットワークを利用し、ニックネームを使っていれば、その居場所を特定するのが不可能になる」

 ロシアで8月1日に施行された「ブロガー法」によると、1日3000人以上が訪問するブログの主は、ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督局の要求事項にしたがって、マスメディアとしての登録を行わなければならない。トーアが広く利用されるようになれば、この法律が無効になってしまう。「情報機関やユーザー情報に関心を持つ人々がトーア侵入を何度か試みた。しかしながら私が知る限り、まだそれは成功していない」とダルビニャン弁護士。