モスクワ地下鉄に新社長就任

タス通信

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 23人の死者を出したモスクワ地下鉄脱線事故で、モスクワ地下鉄のイワン・ベセディン社長が解任された。専門家は、役人の解任だけでなく、地下鉄建設をめぐる経済相互関係の見直しも図られる可能性があると考える。

システムの変更

 セルゲイ・ソビャニン・モスクワ市長は22日、モスクワ市政府会議で、ここ数年車両の入れ替えを含む多くのことがモスクワ地下鉄でなされたものの、15日の事故ですべての功績が否定され、これに関連して、ベセディン社長を解任すると述べた。

 ロシアの投資会社「UFS」のマクロ経済アナリストであるワシリー・ウハルスキー氏はこう話す。「ここ数年で地下鉄は大きく変わり、新しい駅が開業し、新車両が登場し、イメージが新しくなり、幹部は定期的に新たな動きについて報告を行っていた。しかしながら実際には、安全性に問題があることが判明した」

 多くの犠牲者を出した今回のモスクワ地下鉄の事故は、安全性に問題があることをはっきりと示しているという。テロを除けば、今回の事故はモスクワ地下鉄史上最悪である。

 「モスクワ地下鉄は、往来や負荷の多いロシア最大の交通会社。この組織を率いていた人物に、必要な権限や可能性すべてが一任されていたことは明らか」と戦略通信センターのドミトリー・アブザロフ所長は話す。

 特に2011年まで16年間モスクワ地下鉄を率いた、ベセディン氏の前任者であるドミトリー・ガエフ氏は、汚職と権限超越の騒動で解任されている。ガエフ氏は解任の1年後に死亡。「地下鉄の幹部が新しくなってから多額が投じられ、地下鉄はソビャニン新市長の”名刺”のひとつになった」とアブザロフ所長。

 モスクワ地下鉄の新社長に任命されたのはドミトリー・ペゴフ氏。これまでロシア鉄道高速連絡理事会の会長を務め、モスクワ-サンクトペテルブルクの初の高速鉄道の開業責任者でもあった。「新社長の主な課題は、地下鉄を確実に発展させること。高速列車『サプサン』プログラムの元責任者が任命されたのは偶然ではない。高速列車への要求事項は第一に安全確保だった。老朽化した既存のインフラに高速鉄道を導入する必要性もここに含まれていた」とアブザロフ所長。同じ問題はモスクワ鉄道にも現在あるという。

 

首都の交通問題

 ソビャニン市長は2011年の就任当初、モスクワの交通問題を解決するのが任務の一つと考えていた。これにより、モスクワでは大規模な地下鉄建設プログラムが立ち上げられた。2020年までに路線160キロメートル以上と79駅を建設することが決まっており、モスクワ地下鉄の総延長は1.5倍になる見込みだ。

 設計と建設を請け負ったのは建設会社「モスインジュプロエクト」。2011年に地下鉄発展プログラムの運営権を落札していた。それより以前、モスクワの地下鉄建設は「モスメトロストロイ」が排他的に行っていた。これはソ連時代に創設され、民営化された会社である。

 モスインジュプロエクトには、地下鉄の建設コストを抑え、作業期間を短縮するという課題が課せられた。モスインジュプロエクトによると、最新式の技術を活用することで、モスクワ市は各駅の建設費用を68億ルーブル(約204億円)から45億ルーブル(約135億円)まで抑えることができたという。プログラムの総費用は1兆ルーブル(約3兆円)。モスクワ市は2500億ルーブル(約7500億円)も節約することができた。これで新しい路線を50キロメートル建設することができるという。

 モスインジュプロエクトは海外の経験を積極的に採用。第一に、直径9メートルのシールド掘進機で一大トンネルを建設する、スペインの地下鉄敷設技術をとりいれた。この技術はロシアで長年使われていなかった。ロンドン地下鉄のような他の敷設方法が歴史的に一般化されていたためだ。従来の方法では、2つの独立したトンネルを車両が移動し、駅の線路は横に配置される。スペイン方式はプロジェクトのコストを30%まで抑えるという。

 モスインジュプロエクトはまた、地下鉄駅の建設に中国の会社を呼びこんだ。モスクワ市政府は5月、中国鉄建股份有限公司、中国国際基金有限公司と契約を調印。中国の会社は総額60億ドル(約6000億円)の、新たな地下鉄路線建設に関与する。

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未来のモスクワ地下鉄

 今回のモスクワ地下鉄の社長交代は、請負業者の選定にも影響を及ぼす可能性があるという。場合によっては、モスメトロストロイが発注を取り返すかもしれない。「モスメトロストロイは請負業者に数えられているし、以前と同様、モスクワ地下鉄建設でたくさんの仕事を行っている。現在民間の会社であることは関係ない」と、ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家であるドミトリー・バラノフ氏は述べた。